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一房の葡萄(11/15)

(497字。目安の読了時間:1分)

ぶるぶると震えてしかたがない唇を、噛(か)みしめても噛みしめても泣声が出て、眼からは涙がむやみに流れて来るのです。
もう先生に抱かれたまま死んでしまいたいような心持ちになってしまいました。
「あなたはもう泣くんじゃない。よく解ったらそれでいいから泣くのをやめましょう、ね。次ぎの時間には教場に出ないでもよろしいから、私のこのお部屋に入らっしゃい。静かにしてここに入らっしゃい。私が教場から帰るまでここに入らっしゃいよ。いい。」と仰りながら僕を長椅子に坐(すわ)らせて、その時また勉強の鐘がなったので、机の上の書物を取り上げて、僕の方を見ていられましたが、二階の窓まで高く這(は)い上った葡萄蔓(ぶどうづる)から、一房の西洋葡萄をもぎって、しくしくと泣きつづけていた僕の膝の上にそれをおいて静かに部屋を出て行きなさいました。

 一時がやがやとやかましかった生徒達はみんな教場に這入って、急にしんとするほどあたりが静かになりました。
僕は淋(さび)しくって淋しくってしようがない程悲しくなりました。
あの位好きな先生を苦しめたかと思うと僕は本当に悪いことをしてしまったと思いました。

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