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2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

断腸亭日乗(30/30)

(目安の読了時間:2分)名顕四方揚。改故重乗禄。昇高福自昌。是れ御籤の文言なり。余何ぞ声名の四方に揚ることを望まむや。唯故きを改めて重て禄に乗ずるの語、頗意味深長なるを思ふ。古きものは宜しく改むべきなり。冀くはこの大吉一変して凶に返ることな…

断腸亭日乗(29/30)

(652字。目安の読了時間:2分)十二月廿二日。築地二丁目路地裏の家漸く空きたる由。竹田屋人足を指揮して、家具書筐を運送す。曇りて寒き日なり。午後病を冒して築地の家に徃き、家具を排置す、日暮れて後桜木にて晩飯を食し、妓八重福を伴ひ旅亭に帰る。…

断腸亭日乗(28/30)

(658字。目安の読了時間:2分)枕上石亭画談を読む。十二月十六日。旅館に在り無聊甚し。午後築地桜木に至り櫓下の妓八重福を招ぎ、置炬燵に午夢を貪る。十二月十七日。朝の中築地二丁目引越先の家に至り、立退明渡の談判をなす。実は十五日中に引払ふべき…

断腸亭日乗(27/30)

(697字。目安の読了時間:2分)両三日中に買宅の主人引越し来る由なるに、わが方にては築地二丁目の新宅いまだ明渡しの運びに至らず。いろ/\手ちがひのため一時身を置く処もなき始末となれり。此夜桜木にて櫓下の妓両三名を招ぎ、梅吉納会の下ざらひをな…

断腸亭日乗(26/30)

(681字。目安の読了時間:2分)…也 古道具 総計金弐万六千弐百六拾四円弐拾弐銭也支出金高 一金弐千五百円也 築地引越先家屋買入 一金四百六拾円也 建物会社手数料 総計金弐千九百六拾円也差引残金 金弐万参千参百〇四円弐拾弐銭也十二月六日。正午病を冒し…

断腸亭日乗(25/30)

(765字。目安の読了時間:2分)体温平生に復したれど用心して起き出でず。八重次来りて前日の如く荷づくりをなす。春陽堂店員来り、全集第二巻の原稿を携へ去る。十二月二日。小雨降出して菊花はしほれ、楓は大方散り尽したり。病床を出で座右の文房具几案…

断腸亭日乗(24/30)

(640字。目安の読了時間:2分)十一月廿二日。※天。先考の詩集来青閣集五百部ほど残りたるを取りまとめて、威三郎方へ送り届く。夜清元会に行く。適葵山人の来るに逢ふ。大雨となる。十一月廿三日。花月楼主人を訪ふ。楼上にて恰も清元清寿会さらひありと聞…

断腸亭日乗(23/30)

(667字。目安の読了時間:2分)門前何とはなく人の徃来繁し。猶病床に在り。書を松莚子に寄す。月明前夜の如し。十一月十七日。雨ふる。午前五来素川氏来訪せらる。雑誌大観に寄稿せよとのことなり。午後より座右のものを取片づけ居宅引払の凖備をなす。夕…

断腸亭日乗(22/30)

(642字。目安の読了時間:2分)この書近世仏蘭西抒情詩家の随筆中、余の最も愛読して措かざるものなり。十一月六日。雨ふる。明治史要武江年表を見る。十一月七日。※天。心倦みつかれて草稾をつくる気力なし。十一月八日。午後三十間堀の春日に徃き延園を招…

断腸亭日乗(21/30)

(661字。目安の読了時間:2分)午後南明倶楽部古本売立会に赴く。姿記評林購ひたしと思ひしが五拾円といふ高価に辟易して止む。帰途風吹出でゝ俄に寒し。家に帰り案頭の寒暑計を見るに華氏六十度なり。十月廿六日。安田平安居浜野茂の二氏に招がれて三十間…

断腸亭日乗(20/30)

(650字。目安の読了時間:2分)新冨町の妓両三人を携へて新冨座を見る。十月十五日。築地けいこの帰途春日に立寄り三笑庵に赴く。服部歌舟子に招がれしなり。席上始めて市川三升に逢ふ。その面立何となく泉鏡花氏に似たり。此日雨。十月十六日。雨歇まず。…

断腸亭日乗(19/30)

(658字。目安の読了時間:2分)唖々子暴飲泥酔例によつて例の如し。この夜寿美子を招ぎしが来らず。興味忽索然たり。寿美子さして絶世の美人といふほどにはあらず、されど眉濃く黒目勝の眼ぱつちりとしたるさま、何となくイスパニヤの女を思出さしむる顔立…

断腸亭日乗(18/30)

(652字。目安の読了時間:2分)新橋妓史をつくらむとて其資料を閲読す。堀口氏詩集月光とピヱロの序を草す。九月廿五日。晴。唖※子来訪。夜座右の火鉢にて林檎を煮る。電燈明滅すること数次なり。九月廿六日。晴。葉※頭の種を摘む。萩の花散りつくしぬ。九…

断腸亭日乗(17/30)

(634字。目安の読了時間:2分)花月第六号前半の編輯を終る。九月十日。※下市ヶ谷辺散歩。八幡宮の岡に登る。秋風颯然として面を撲つ。夕陽燦然たり。夜外祖父毅堂先生が親燈余影をよむ。火鉢にて辣薤を煮る。秋涼漸く自炊によし。九月十二日。萩さき乱れ野…

断腸亭日乗(16/30)

※今日の配信にはお知らせが掲載されています。最後までお見逃しなく! (624字。目安の読了時間:2分)午前松莚子を訪ひ、三才社に立寄りて帰る。八月廿五日。八重次来る。唖※子亦来る。夜八重次を送りて四谷に至り、別れて帰る。八月廿六日。久しく雨なし。…

断腸亭日乗(15/30)

(677字。目安の読了時間:2分)昨日立秋となりしより満目の風物一として秋意を帯びざるはなし。八重次病あり。入院の由書信あり。八月十二日。女郎花ひらく。執筆半日。八月十三日。春陽堂荷風全集第二巻に当てんがため、あめりか物語ふらんす物語二書の校…

断腸亭日乗(14/30)

(647字。目安の読了時間:2分)八月朔。連日の炎暑に疲労を覚ること甚し。夜九時頃微雨あり涼風頓に生ず。喜んで筆を把らむとするに蚊軍雨に追はれ家の中に乱入す。一枚をも書き得ずして已む。八月三日。唖※子病むとの報あり。八月五日。再び疑雨集をよむ。…

断腸亭日乗(13/30)

(611字。目安の読了時間:2分)唖※子の談に本郷辺にては蝉未鳴かざるに早く蜩をきゝたりといふ。昨日赤蜻※の庭に飛ぶを見たり。是亦奇といふべし。七月十六日。花月第四号編輯。七月十七日。天気定りて再び暑くなりぬ。七月十八日。未秋ならざるに此夜虫声…

断腸亭日乗(12/30)

(658字。目安の読了時間:2分)七月二日。清元梅吉唖※子をたのみ一枝会帳簿の整理をなしたき由。再参の依頼により其の趣を唖々子に報ず。七月三日。風あり暑気少しく忍易し。母上来たまひて老媼しん入用なればとて連行かれたり。予は始めより秋田県出張中な…

断腸亭日乗(11/30)

(623字。目安の読了時間:2分)日曜日。夕方久米氏来訪。井阪梅雪氏現のせうこを請はるゝ由を告ぐ。後園に栽培したる薬草を摘み久米氏に托して贈る。六月十七日。この頃腹具合思はしからず。築地に行きしが元気なく三味線稽古面白からず。六月十八日。陰晴…

断腸亭日乗(10/30)

(629字。目安の読了時間:2分)毎日風冷にして雨ふる。梅花の時※[#「くさかんむり/即」、U+83AD、29-10]と思誤りてや此日頻に鶯の啼くを聞きぬ。五月廿六日。天候穏ならず。風冷なり。夜山家集をよむ。五月廿七日。薔薇花満開。夜唖※子来談。花月第一号…

断腸亭日乗(9/30)

(650字。目安の読了時間:2分)河骨を植えたる水瓶の中にて鳴くものの如し。五月五日。母上粽を携へて病を問はる。昼過四時頃驟雨雷鳴。夜に及んで益甚し。電燈明滅二三回に及ぶ。初更花月第一号新橋堂より到着す。五月六日。階前の来青花開く。異香馥郁た…

断腸亭日乗(8/30)

(641字。目安の読了時間:2分)円右、小さん、喜久太夫、山彦師匠、各得意の技をなす。四月廿三日。常磐木倶楽部にて梅吉弟子梅初名弘の会あり。余野間翁と共に招がれ、梅之助の三味線、梅次上調子にて浦里を語る。翁は得意の青海波を語る。四月廿六日。午…

断腸亭日乗(7/30)

(693字。目安の読了時間:2分)然る処いろ/\面倒なる事のみ起来りて煩しければ暇をやり、良き縁もあらば片づきて身を全うせよと言聞かせ置きしが、矢張浮きたる家業の外さしあたり身の振方つかざりしと見ゆ。三月廿七日。母上訪来らる。三月廿八日。風邪…

断腸亭日乗(6/30)

(654字。目安の読了時間:2分)此日東洋印刷会社へ支払ふ。三月九日。微風軽寒。神田電車通の古書肆をあさる。三月十日。春※鶯語を聞く。午後烈風雨を誘ひしが夜半に至り雲去り星出づ。三月十一日。風寒し。風邪の心地にて早く寝に就く。三月十二日。臥病。…

断腸亭日乗(5/30)

(638字。目安の読了時間:2分)二月十三日。樹間始めて鶯語をきく。福寿草花あり。今村次七君金沢より出京、断膓亭を訪はれ浮世絵の事を談ぜらる。二月十五日。三田文学に書かでもの記を寄す。二月廿四日。新演藝過日市川左団次のために懸賞脚本の募集をな…

断腸亭日乗(4/30)

(641字。目安の読了時間:2分)余両三年来折々沢田東江の書帖を臨写すれど今に至つて甚悪筆なり。三味線と書とはいつも思ふやうに行かず。よく/\不器用の生れと見ゆ。正月廿八日。過日断膓亭襍稾を知友に贈呈す。其返書追追到着す。馬塲孤蝶氏懇切なる批…

断腸亭日乗(3/30)

(648字。目安の読了時間:2分)蝋梅二株ある中其の一株去年より勢なく花をつくる事少くなりたれば今より枯れぬ用心するなり。此日いかなる故にや鵯群をなして庭に来り終日啼き※[#「口+斗」、U+544C、21-10]びぬ。正月十四日。西北の風烈しく庭樹の鳴り…

断腸亭日乗(2/30)

(699字。目安の読了時間:2分)其後は今の入江家との地境になりし檜の植込深き間にひそみ庭に下り来りて散り敷く落葉を踏み歩むなり。此の鳩そも/\いづこより飛来れるや。果して十年前の鳩なるや。或は其形のみ同じくして異れるものなるや知るよしもなし…

断腸亭日乗(1/30)

※今日の配信にはお知らせが掲載されています。最後までお見逃しなく!(701字。目安の読了時間:2分)荷風歳四十正月元日。例によつて為す事もなし。午の頃家の内暖くなるを待ちそこら取片づけ塵を掃ふ。正月二日。暁方雨ふりしと覚しく、起出でゝ戸を開くに…