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断腸亭日乗(12/30)

(658字。目安の読了時間:2分)

七月二日。
清元梅吉唖※子をたのみ一枝会帳簿の整理をなしたき由。
再参の依頼により其の趣を唖々子に報ず。
七月三日。
風あり暑気少しく忍易し。
母上来たまひて老媼しん入用なればとて連行かれたり。
予は始めより秋田県出張中なる威三郎方へ遣したき下心なりと推察したれば何事をも言はざりしなり。
我が家俄に炊事をなすものなく独居の不便こゝに至つて益甚しくなりぬ。
七月四日。
唖※子来談。
晩来微雨あり。
涼風簾を撲つ。
七月五日。
微雨あり、風涼し。
七月六日。
電車にて赤坂を過ぐ。
妓窩林家の屋上に七夕の笹竹立てられ願の糸の風になびけるを見たり。
旧年の風習今は唯妓窩に残るのみ。
天下若し妓なかりせば、服左袒(〔ママ〕)。
言侏離たらん歟。
呵呵。
七月七日。
甘草花開く。
七月十日。
新福亭主人来訪。
七月十二日。
中国より京阪地方暴風雨に襲はれし由。
其の余波にや昨日より烈風吹続き、炎天の空熱砂に蔽はる。
唖※子花月編輯のため来訪。
新橋の妓八重次亦来る。
夕刻大雨沛然。
風漸く歇む。
今朝唖※子第二子出生の由。
賀すべし。
七月十三日。
唖※子と倶に八重次を訪ひその家に飲む。
八重次余の帰るを送り四谷見附に至り袂を分つ。
七月十四日。
凌霄花開く。
七月十五日。
去十二日より引つゞきて天気猶定まらず風冷なること秋の如し。
四十雀羣をなして庭樹に鳴く。
唖※子の談に本郷辺にては蝉未鳴かざるに早く蜩をきゝたりといふ。

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