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断腸亭日乗(30/30)

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名顕四方揚。
改故重乗禄。
昇高福自昌。
是れ御籤の文言なり。
余何ぞ声名の四方に揚ることを望まむや。
唯故きを改めて重て禄に乗ずるの語、頗意味深長なるを思ふ。
古きものは宜しく改むべきなり。
冀くはこの大吉一変して凶に返ることなかれ。
十二月廿九日。
今まで牛込区に在りし戸籍を京橋区に移さむとて、午後神楽阪上なる区役所に赴きしが、年末にて事辨ぜず。
帰途銀座にて西京焼土鍋の形雅なるものを見、購ひ帰りて粥を煮る。
夜半八重福来りて宿す。
十二月三十日。
寒気甚し。
草訣辨疑を臨写す。
墨摺りたるついで桜木の老婦に請はれし短冊に、悪筆を揮ふ。
来春は未の年なれば、羊の絵を描き
千歳の翁に似たるあごの髯
角も羊はまろく収めて
三更寝に就かむとする時、八重福また門を敲く。
独居凄涼の生涯も年と共に終りを告ぐるに至らむ※。
是喜ぶべきに似て又悲しむべきなり。
十二月卅一日。
新春の物買はむとて路地を出でしが、寒風あまりに烈しければ止む。
寒檠の下に孤坐して王次回が疑雨集をよむに左の如き絶句あり。
歳暮客懐
無レ父無レ妻百病身。
孤舟風雪阻二銅塾一。
残冬欲レ尽帰猶嬾。
料是無二人望一レ倚レ門。
是さながら予の境遇を言ふものゝ如し。
忽にして百八の鐘を聴く。

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12月は永井荷風の『断腸亭日乗』をお送りしました!
また『文豪どうかしてる逸話集』さんとのコラボは今月で終了ですが、著者の進士素丸さんは 現在集英社のWebメディア「よみタイ」で文豪エピソードを紹介する新連載も執筆されています。
逸話が気に入った方はこちらもぜひチェックしてみてください。

▼ブンゴウ泣きたい夜しかない。~文豪たちのなんだかおかしい人生劇場 | よみタイ
https://yomitai.jp/series/shinjisumaru/

早いもので今年もあと1ヶ月ですね。
それではまた明日!

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