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断腸亭日乗(17/30)

(634字。目安の読了時間:2分)

花月第六号前半の編輯を終る。
九月十日。
※下市ヶ谷辺散歩。
八幡宮の岡に登る。
秋風颯然として面を撲つ。
夕陽燦然たり。
夜外祖父毅堂先生が親燈余影をよむ。
火鉢にて辣薤を煮る。
秋涼漸く自炊によし。
九月十二日。
萩さき乱れ野菊また花開く。
九月十四日。
早朝清元けいこの帰途、三十間堀春日に立寄り、薗八節さらはむとて老妓延園を招ぎしが来らず。
直に帰宅す。
今日新橋の教坊にて薗八節三味線を善くするもの延園、りき、ゆふの三老妓のみなりと云。
九月十五日。
朝寒し。
障子をしめ火鉢に火を置く。
九月十六日。
朝夕の寒さ身に沁むばかりなり。
されど去年に比すれば健康なり。
何のかのといふ中また一年生きのびたれどさして嬉しくもなし。
九月十七日。
早朝築地に赴き薗八清元のけいこをなす。
午下帰宅。
旧稿を整理す。
二更寝に就かむとする時花月第六号校正摺来る。
九月十八日。
風雨。
九月十九日。
雨晴れしが風未歇まず。
残暑再び燬くが如し。
日暮風歇みて一天雲翳なし。
仲秋の明月鏡の如し。
虫の音日中の暑さにいつもより稠くなりぬ。
九月二十日。
木槿花開く。
九月二十一日。
東京新繁昌記の類を一覧す。
盖し雑誌花月編輯のためなり。
九月廿二日。
雨ふりて俄に寒し。
セルの単衣に襦袢を重ねてきる。
九月廿四日。
風雨終日歇まず。
新橋妓史をつくらむとて其資料を閲読す。

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