【ブンゴウメール】大つごもり (3/31)
(354字。目安の読了時間:1分)
二つの手桶に溢(あふ)るるほど汲(く)みて、十三は入れねば成らず、大汗に成りて運びけるうち、輪宝のすがりし曲み歯の水ばき下駄、前鼻緒のゆるゆるに成りて、指を浮かさねば他愛の無きやう成し、その下駄にて重き物を持ちたれば足もと覚束なくて流し元の氷にすべり、あれと言ふ間もなく横にころべば井戸がはにて向ふ臑(ずね)したたかに打ちて、可愛や雪はづかしき膚に紫の生々しくなりぬ、手桶をも其処に投出して一つは満足成しが一つは底ぬけに成りけり、此桶(これ)の価なにほどか知らねど、身代これが為につぶれるかの様に御新造の額際に青筋おそろしく、朝飯のお給仕より睨(にら)まれて、その日一日物も仰せられず、一日おいてよりは箸の上げ下しに、この家の品は無代では出来ぬ、主の物とて粗末に思ふたら罸(ばち)が当るぞえと明け暮れの談義、
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【お知らせ】
「大つごもり」はかなり難解で読みにくいと思うのですが、現代語訳をブログで公開してくださっている方もいらっしゃいます。意味が取りにくいときはぜひ読み比べてみてください。
まちこの文机 - 明治期の文語体小説を現代語訳
また現代語訳した書籍も出版されています。気になる方はこちらをどうぞ。
それでは残り1ヶ月、めげずにがんばりましょう!
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【ブンゴウメール】大つごもり (2/31)
(358字。目安の読了時間:1分)
厭(い)やに成つたら私の所まで端書一枚、こまかき事は入らず、他所の口を探せとならば足は惜しまじ、何れ奉公の秘伝は裏表と言ふて聞かされて、さても恐ろしき事を言ふ人と思へど、何も我が心一つで又この人のお世話には成るまじ、勤め大事に骨さへ折らば御気に入らぬ事も無き筈(はづ)と定めて、かかる鬼の主をも持つぞかし、目見えの済みて三日の後、七歳になる嬢さま踊りのさらひに午後よりとある、その支度は朝湯にみがき上げてと霜氷る暁、あたたかき寝床の中より御新造灰吹きをたたきて、これこれと、此詞が目覚しの時計より胸にひびきて、三言とは呼ばれもせず帯より先に襷(たすき)がけの甲斐々々しく、井戸端に出れば月かげ流しに残りて、肌を刺すやうな風の寒さに夢を忘れぬ、風呂は据風呂にて大きからねど、二つの手桶に溢(あふ)るるほど汲(く)みて、
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【ブンゴウメール】大つごもり (1/31)
(333字。目安の読了時間:1分)
上
井戸は車にて綱の長さ十二尋、勝手は北向きにて師走の空のから風ひゆうひゆうと吹ぬきの寒さ、おお堪えがたと竈(かまど)の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大台にして叱(しか)りとばさるる婢女の身つらや、はじめ受宿の老媼さまが言葉には御子様がたは男女六人、なれども常住家内にお出あそばすは御総領と末お二人、少し御新造は機嫌かいなれど、目色顔色を呑(の)みこんでしまへば大した事もなく、結句おだてに乗る質なれば、御前の出様一つで半襟半がけ前垂の紐(ひも)にも事は欠くまじ、御身代は町内第一にて、その代り吝(しは)き事も二とは下らねど、よき事には大旦那が甘い方ゆゑ、少しのほまちは無き事も有るまじ、厭(い)やに成つたら私の所まで端書一枚、
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【お知らせ】
年内最後のブンゴウメール、12月は樋口一葉の代表作の1つ、『大つごもり』をお送りします。
「大つごもり」とは「大晦日」のこと。貧困のため奉公に出された女性「お峰」の周囲を描く、大晦日前後のお話です。
言葉遣いが難しいですが、短めの作品なのでぜひ明治の年末風景をお楽しみください。
※樋口作品は句点(。)が少なく一文が非常に長いので、毎回の配信は読点(、)で区切っています。少し読みづらいですがご了承ください。
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【ブンゴウメール】山月記 (15/15)
(479字。目安の読了時間:1分)
そうして、附加えて言うことに、袁※(えんさん)が嶺南からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人を認めずに襲いかかるかも知れないから。
又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、此方を振りかえって見て貰いたい。
自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。
勇に誇ろうとしてではない。
我が醜悪な姿を示して、以て、再び此処を過ぎて自分に会おうとの気持を君に起させない為であると。
袁※(えんさん)は叢に向って、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。
叢の中からは、又、堪え得ざるが如き悲泣の声が洩(も)れた。
袁※(えんさん)も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。
一行が丘の上についた時、彼等は、言われた通りに振返って、先程の林間の草地を眺めた。
忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。
虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮(ほうこう)したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
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底本:「李陵・山月記」新潮文庫、新潮社
1969(昭和44)年9月20日発行
入力:平松大樹
校正:林めぐみ
1998年11月12日公開
2010年11月2日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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【ブンゴウメール】山月記 (14/15)
(517字。目安の読了時間:2分)
だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。
それは我が妻子のことだ。
彼等は未だ※略(かくりゃく)にいる。
固より、己の運命に就いては知る筈(はず)がない。
君が南から帰ったら、己は既に死んだと彼等に告げて貰えないだろうか。
決して今日のことだけは明かさないで欲しい。
厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐(あわ)れんで、今後とも道塗に飢凍することのないように計らって戴けるならば、自分にとって、恩倖、これに過ぎたるは莫(な)い。
言終って、叢中から慟哭(どうこく)の声が聞えた。
袁もまた涙を泛(うか)べ、欣(よろこ)んで李徴の意に副いたい旨を答えた。
李徴の声はしかし忽(たちま)ち又先刻の自嘲的な調子に戻って、言った。
本当は、先ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己が人間だったなら。
飢え凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を気にかけているような男だから、こんな獣に身を堕すのだ。
そうして、附加えて言うことに、袁※(えんさん)が嶺南からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人を認めずに襲いかかるかも知れないから。
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【ブンゴウメール】山月記 (13/15)
(448字。目安の読了時間:1分)
己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。
そういう時、己は、向うの山の頂の巖(いわ)に上り、空谷に向って吼(ほ)える。
この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。
己は昨夕も、彼処で月に向って咆(ほ)えた。
誰かにこの苦しみが分って貰(もら)えないかと。
しかし、獣どもは己の声を聞いて、唯、懼(おそ)れ、ひれ伏すばかり。
山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮(たけ)っているとしか考えない。
天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。
ちょうど、人間だった頃、己の傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。
己の毛皮の濡(ぬ)れたのは、夜露のためばかりではない。
漸く四辺の暗さが薄らいで来た。
木の間を伝って、何処からか、暁角が哀しげに響き始めた。
最早、別れを告げねばならぬ。
酔わねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の声が言った。
だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。
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【ブンゴウメール】山月記 (12/15)
(460字。目安の読了時間:1分)
己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。
虎だったのだ。
これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。
今思えば、全く、己は、己の有っていた僅かばかりの才能を空費して了った訳だ。
人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭(いと)う怠惰とが己の凡てだったのだ。
己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。
虎と成り果てた今、己は漸くそれに気が付いた。
それを思うと、己は今も胸を灼(や)かれるような悔を感じる。
己には最早人間としての生活は出来ない。
たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。
まして、己の頭は日毎に虎に近づいて行く。
どうすればいいのだ。
己の空費された過去は?
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