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三十年後の東京(16/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(529字。目安の読了時間:2分)

昔は六大都市といったり、そのほか中小都市がたくさんありましたが、いまは地上にはそんなものは残っていません。しかし、地の中のにぎわいは大したものですよ。これからそっちへご案内いたしましょう」

 正吉は、区長たちの案内で、ふたたび地下へ下りた。

 地下といえば、正吉の地下鉄の中のかびくさいにおいを思い出す。

鉄道線路の下に掘られてある横断用の地下道の、あのくらい陰気な、そしてじめじめしたいやな気持を思い出す。

また炭坑の中のむしあつさを思い出す。

 だが、区長たちに案内されていった地下街は、まったく違っていた。

陰気でもなく、じめじめなんかしておらず、すこしもかびくさくない。

またむしあついことなんか、すこしもなかった。

それからまた、いきがつまるようなこともなかった。

 だから、まるで気もちのいい山の上の別荘の部屋にいるような気がし、また気もちのいい春か秋かのころ、街道を散歩しているようでもあった。

「それは、ですね。この地下街を建設するためには、あらゆる衛生上の注意がはらってあって私たちが気もちよく暮せるように、いろいろな施設が備わっているのです。たとえば空気は念入りに浄化され、有害なバイキンはすっかり殺されてから、この地下へ送りこまれます。

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三十年後の東京(15/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(523字。目安の読了時間:2分)

わが地球人類の中の悪いやつが、ひそかに原子弾をかくして持っていましてね、それを飛行機につんで持って来て、空からおとすのです」

「どうしてでしょうか」

「どうしてでしょうかと、おっしゃいますか。つまり昔からありました、強盗だのギャングだのが。今の強盗やギャングの中には、原子弾を使う奴がいるのです。どーンとおとしておいて、その地区が大混乱におちいると、とびこんでいって略奪をはじめるのです。ですから、そういう連中を警戒するためにも、あれが必要なのです」

 そういってカニザワ区長は、警戒塔を指さした。

「いやあ、三十年後の強盗団はさすがにすごいことをやりますね」

 と、正吉少年はおどろいてしまった。

   すばらしい地下生活

 区長さんの話によると、人々は地下に家を持って、安全に暮しているが、事件や戦争のないときにはこうして、大昔の武蔵野平原にかえった大自然の風景の中に自分もとけこんで、たのしい散歩やピクニックをする人が少なくないとのことであった。

「じゃあ、前のような地上の大都市というものは、どこにもないのですね」

「そうですとも。昔は六大都市といったり、そのほか中小都市がたくさんありましたが、いまは地上にはそんなものは残っていません。

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三十年後の東京(14/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(610字。目安の読了時間:2分)

そのために、われわれ地球人類の力は弱くなり、いざ星人がやってきたときには防衛力が弱くて、かんたんに彼らの前に手をつき、頭をさげなければならないだろう。――それをおもえば、今われわれ人類の国と国とが戦争するのはよくないことである。つまり、『今おこりかかっている戦争はおよしなさい』と警告したのです」

「ああ、なるほど、なるほど、そのとおりですね」

「それが両国によく分ったと見えましてね、爆発寸前というところで戦争のおこるのは、くいとめられたんです。お分りですかな」

「それはよかったですね。しかし、そんならなぜ、あのようにたくさんの原子弾の警戒塔や警報所や待避壕なんかが、今もならんでいるのですか」

 正吉には、そのわけが分らなかった。

「いやあれは、あたらしく襲来するかもしれない宇宙の外からの敵が、原子弾をこっちへなげつけたときに、役に立つようにと建設せられてあるんです」

「ああ、そうか。あの星人とかいう連中も、原子弾を使うことが分っているのですね」

「多分、それを使うだろうと学者たちはいっていますよ――それに、もう一つああいう防弾設備がぜひ必要なわけがあるんです」

「それはどういうわけですか」

「それは、ですね。わが地球人類の中の悪いやつが、ひそかに原子弾をかくして持っていましてね、それを飛行機につんで持って来て、空からおとすのです」

「どうしてでしょうか」

「どうしてでしょうかと、おっしゃいますか。

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三十年後の東京(13/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(588字。目安の読了時間:2分)

「で、戦争は起ったのですか、それとも……」

「もう一つの重大なことがらは」

 と区長は正吉の質問にはこたえず、さっきの続きを話した。

「連合科学協会員は最近天空においておどろくべき観測をした。それはどういうことであるかというと、わが地球をねらってこちらへ進んでくるふしぎな星があるということだ。それは彗星ではない。その星の動きぐあいから考えると、その星は自由航路をとっている。つまり、その星は飛行機やロケットなどと同じように、大宇宙を計画的に航空しているのだ」

「へえーッ。するとその星には、やっぱり人間が住んでいて、その人間が星を運転しているんですね」

「ま、そうでしょうね――だからわれわれは、もう一刻もゆだんがならないというのです。その星はわが太陽系のものではなく、あきらかにもっと遠いところからこっちへ侵入して来たものだ。そしてその星に住んでいるいきものは、わが地球人類よりもずっとかしこいと思われる。さあ、そういう星に来られては、われわれはちえも力もよわくて、その星人に降参しなければならないかもしれない。そのような強敵を前にひかえて、同じ地球に住んでいる人間同士が戦いをおこすなどということは、ばかな話ではないか。そのために、われわれ地球人類の力は弱くなり、いざ星人がやってきたときには防衛力が弱くて、かんたんに彼らの前に手をつき、頭をさげなければならないだろう。

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三十年後の東京(12/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(504字。目安の読了時間:2分)

その後また大きな戦争がおこりかけましてね――もちろん日本は関係がないのですがね――そのために、おびただしい原子爆弾が用意されました。そのとき世界の学者が集って組織している連合科学協会というのがあって、そこから大警告を出したのです。それは二つの重大なことがらでした」

「どういうんですか、その重大警告というのは……」

「その一つはですね、いま戦争をはじめようとする両国が用意したおびただしい原子爆弾が、もしほんとうに使用されたときには、その破壊力はとてもすごいものであって、そのためにわれらの住んでいる地球にひびが入って、やがていくつかに割れてしまうであろう。そんなことがあっては、われわれ人間はもちろん地球上の生物はまもなく死に絶えるだろう。だから、そういう危険な戦争は中止すべきである――というのです」

 カニザワ東京区長は、そう語りながら、ハンカチーフを出して、顔の汗をぬぐった。

おそらく氏は、その戦争勃発一歩前の息づまるような恐怖を、今またおもいだしたからであろう。

「で、戦争は起ったのですか、それとも……」

「もう一つの重大なことがらは」

 と区長は正吉の質問にはこたえず、さっきの続きを話した。

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三十年後の東京(11/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(537字。目安の読了時間:2分)

あれは何ですか」

 林と草原の間に、妙にねじれた塔や、低い緑色の鍋をふせたようなものが見える。

「あのまるいものは、住宅の屋上になっています。塔は、原子弾が近づくのを監視している警戒塔です。すべて原子弾を警戒して、こんな銀座風景になったのです。みんな地下に住んでいます。ときどきものずきな者が、こうして地上に出て散歩するくらいです。おどろきましたか」

 正吉はたしかにおどろいた。

あのにぎやかな銀座風景は、今は全く地上から姿をけしてしまったのだ。

   近づく星人

「まだ、戦争をする国があるんですか」

 正吉少年は、ふしぎでたまらないという顔つきで、案内人のカニザワ区長にきいた。

「やあ、そのことですがね、まず戦争はもうしないことに決めたようです」

「戦争をするもしないも日本は戦争放棄をしているんだから、日本から戦争をしかけるはずはないんでしょう。もっともこれは今から三十何年もむかしの話でしたがね」

 正吉はあのころ新憲法ができて、それには戦争放棄がきめられたことをよくおぼえていた。

「正吉君のいうことは正しいです。しかしですね。その後また大きな戦争がおこりかけましてね――もちろん日本は関係がないのですがね――そのために、おびただしい原子爆弾が用意されました。

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三十年後の東京(10/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(536字。目安の読了時間:2分)

何にのるのですか」

「動く道路です。そうそう、あなたの住んでいた三十年前には、動く道路はなかったんでしょうね。そのころは電車や自動車ばかりだったんでしょう。今はそんなものは、ほとんどなくなりました。その代りは動く道路がしています。道が動くのです。五本の動く道路が並んでいるのです。昔あったでしょう。ベルトというものがね。あれみたいに動くのです。歩道に平行に五本並んでいて、歩道に一番近いのが時速十キロで動いているもの。次が二十キロ、それから三十キロ、四十キロ、五十キロという風にだんだん早くなります。そしてその動く道路は、どこへ行くか方向がかいてあるのです。……ほらごらんなさい。これが銀座行きの動く道路ですから」

 ようやく外に出た。

日光がかがやいていた。

それまでは地下にいたことが分った。

なつかしい日光、うまい空気! しかし変だ。

「ここはどこですか。みたことがない野原ですね」

「ここが銀座です。あなたの立っているところが、昔の銀座四丁目の辻のあったところです」

「うそでしょう。……おやおや、妙な塔がある。それから土まんじゅうみたいなものが、あちこちにありますね。あれは何ですか」

 林と草原の間に、妙にねじれた塔や、低い緑色の鍋をふせたようなものが見える。

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