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【ブンゴウメール】走れメロス (11/31)

(367字。目安の読了時間:1分)

新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。

祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。

メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。

祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。

メロスは、一生このままここにいたい、と思った。

この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。

ままならぬ事である。

メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。

あすの日没までには、まだ十分の時が在る。 ==============================================

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