【ブンゴウメール】オシャベリ姫 (10/31)
(897字。目安の読了時間:2分)
その上にいつどこから出て来たか、雲雀の兵隊や巡査までが繰出して来て、
「キイキイ、ピイピイ」
と叫びながら、広い野原を逃げまわるオシャベリ姫を追っかけまわしました。
その恐ろしいこと……。
オシャベリ姫はもう夢中になって泣きながら逃げまわっていましたが、やがて草の中にあった深い井戸の中へ真逆様に落ち込んで、そのままズンズンどこまでも落ちて行きました。
姫は又ビックリして、
「アレ、助けて」
と叫びましたが、あんまりの恐ろしさに眼をまわしてしまいました。
けれども間もなく又気がついて見ますと、今度はいつ連れて来られたのか、立派な寝床の上に寝かされて、頭の下には柔かい枕が置いてあります。
どうしたのかしらんと思って、そこいらを見まわしますと、又ビックリしました。
枕元には人間の大きさ位の青蛙の看護婦が二人、黄金色の眼を光らして、白い咽喉をヒクヒクさせながら腰をかけています。
青蛙の看護婦はオシャベリ姫が眼をさましたのをみると、すぐに立ち上って、
「キャッ、キャッ、キャッ、キャッ」
と呼びました。
すると向うの室で、
「クン……クン」
という声がきこえまして、黒い立派な洋服を着て眼鏡をかけた大きな疣(いぼ)蛙が、黒い皮の鞄を提げてノッサノッサと出て来ました。
その疣(いぼ)蛙は姫のそばへ来ると、鞄から虫眼鏡を出して、姫の顔を眼から鼻から口と一つ一つていねいにのぞきましたが、おしまいに黒い冷たい手で姫の手を掴もうとしました。
姫は驚いて、
「アレ」
と云って手を引っこめますと、疣蛙は眼をパチクリさせていましたが、やがて青蛙の看護婦に、
「クフン、クフン」
と何か云いつけて出て行ってしまいました。
そうすると、それと入れ違いに今度は赤い兵隊の服を着た赤蛙が先に立って、あとから最前の疣蛙が這入って来ると、立派な金モールの服を着た殿様蛙と、その奥さんらしいやさしい顔をした青蛙が這入って来ました。
この殿様蛙夫婦が這入って来ると、室中にいた疣蛙も赤蛙も青蛙もみんな一時に床の上にひれ伏してしまいました。
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