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【ブンゴウメール】オシャベリ姫 (14/31)

(899字。目安の読了時間:2分)

昼間オシャベリをする雲雀や、夜中に鳴きまわる蛙がいないから、どんなにうるさくなくていいだろう」

 と思いながらフト足もとを見ますと、一本の蔦葛が垂下って、ずうっと崖の下の家の側まで行っております。

 オシャベリ姫は直ぐにその蔦葛を伝って下へ降り初めました。

「もうこの国へ来たら口を利くまい。この国にはあの雲雀や蛙の口のように、もっとやっぱりあたしよりもずっとひどいオシャベリがいて、あたしをシャベリ負かしていじめるに違いない。そうしてオシャベリさえしなければきっと親切にしてもらえるに違いない」

 とこう思いながら、オシャベリ姫は蔦葛にすがって崖を降りはじめました。

 初めのうちは崖がデコボコしているので、オシャベリ姫はちょうど段々を降りるようにして蔦葛にすがりながら降りてゆきましたが、だんだん下の方になりますと崖が急になって、しまいには全く宙にブラ下ってしまいました。

姫はこわくなって引返そうとしましたが、もう引返す力が抜けてしまいまして、姫はあまりの恐ろしさに蔦葛にすがりながら泣き出しました。

 その声をききつけたものか、はるか崖の下の草原へ大勢の人が出て姫の姿を見上げていましたが、崖があんまり高いので、そんな人たちがまるで蟻のように見えました。

 これを見ると姫は一層恐ろしくなって、手と足で蔓(つる)にかじり付いてブルブルふるえていますと、その中にはるか下の方から姫の掴まっていた蔦葛を伝って昇って来るものがあります。

だんだん近づいて見ますと、それは黒い服にズボンを穿(は)いて、白い靴に赤い覆面をした奇妙な人間でしたが、さも軽そうに姫を引っ抱えますと、胴のところへ何やら小さな包みの紐みたようなものをくくりつけますと、いきなり姫の身体を投げ落しました。

 オシャベリ姫は肝を潰して、思わず、

「アレッ」

 と叫びましたが、間もなくポカーアンと大きな音がしたと思うと、姫の頭の上で大きな傘が開いて、折から吹く風につれて、向うに見えるお城の方へフワリフワリと飛んで行きました。

 姫は又ビックリしましたが、それでも命が助かったのでホッと安心をしました。

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