クリスマス・イーヴ(5/31)
(380字。目安の読了時間:1分)
馭者は門番の大きな鐘を鳴した、鐘の音は靜かな凍てついた空氣の中でりんりんと響き渡り、之に應じて遠くで犬の吠えたてる聲がした。
犬たちがこの邸宅を護つてゐるのと見える。
一人の老媼が直に門口に現れた。
月の光がけざやかに老女の上に降りそそいだので、わたしは一人の小造りで素朴な婦人の姿を隈なく見ることが出來た、身なりはいかにも古風な趣味で、小ざつぱりとした髮被ひと胸飾を着け、銀のやうな髮毛が雪白の帽子の下から覗いてゐた。
彼女は膝を屈めて敬禮しながら、若主人を迎へる歡びを顏にも言葉にも現すのであつた。
夫は恐らく、お邸へ行つてクリスマス・イーヴを召使部屋で祝つてゐるのであらう。
この男がゐないと座が持てなかつた、お邸では一番の唄上手、話上手であつたのだ。
友人の申出に從つて、わたしたちは馬車を降り、莊園の中を歩いて邸館まで行くことにした。
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彼女は膝を屈めて敬禮しながら、若主人を迎へる歡びを顏にも言葉にも現すのであつた。
夫は恐らく、お邸へ行つてクリスマス・イーヴを召使部屋で祝つてゐるのであらう。
この男がゐないと座が持てなかつた、お邸では一番の唄上手、話上手であつたのだ。
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