【ブンゴウメール】人間椅子 (15/31)
(587字。目安の読了時間:2分)
私は、非常に長い間(ただそんなに感じたのかも知れませんが)少しの物音も聞き洩(もら)すまいと、全神経を耳に集めて、じっとあたりの様子を伺って居りました。
そうして、暫くしますと、多分廊下の方からでしょう、コツコツと重苦しい跫音が響いて来ました。
それが、二三間向うまで近付くと、部屋に敷かれた絨氈の為に、殆(ほとん)ど聞きとれぬ程の低い音に代りましたが、間もなく、荒々しい男の鼻息が聞え、ハッと思う間に、西洋人らしい大きな身体が、私の膝の上に、ドサリと落ちてフカフカと二三度はずみました。
私の太腿と、その男のガッシリした偉大な臀部とは、薄い鞣皮一枚を隔てて、暖味を感じる程も密接しています。
幅の広い彼の肩は、丁度私の胸の所へ凭れかかり、重い両手は、革を隔てて、私の手と重なり合っています。
そして、男がシガーをくゆらしているのでしょう。
男性的な、豊な薫が、革の隙間を通して漾(ただよ)って参ります。
奥様、仮にあなたが、私の位置にあるものとして、其場の様子を想像してごらんなさいませ。
それは、まあ何という、不思議千万な情景でございましょう。
私はもう、余りの恐ろしさに、椅子の中の暗闇で、堅く堅く身を縮めて、わきの下からは、冷い汗をタラタラ流しながら、思考力もなにも失って了って、ただもう、ボンヤリしていたことでございます。
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