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【ブンゴウメール】オシャベリ姫 (27/31)

(952字。目安の読了時間:2分)

あなたの国の人はお話はするでしょうけれども、嘘は云わないでしょう」

「ええ、嘘を云うものは一人もおりません」

「それに何だってあなたのお付の女中は嘘を云ったのでしょう。あなたから短刀と蜘蛛のお話をきいていながら、なぜそれをきかないなぞ云って、あなたのお父様を怒らして、あなたを石の牢屋へ入れさせたのでしょう」

「そうですわねえ。私は今でもそれを不思議と思っているのですよ。私の二人の女中は、今までそれはそれは忠義ないい女中で、そんな意地のわるいことをしたことは一度もありませんでしたのに……」

「不思議ですね」

「どうしたのでしょうね」

 と二人は顔を見合わせました。

 そのときにはるか下の方でバタンバタンという音につれて、

「ウーン、ウーン」

 という声がきこえました。

 二人はビックリしましたが、すぐに上り口からはるか下の方をのぞいて見ますと、長い長い梯子段の下のところで、例の大きな蜘蛛と、白い衣服を着た女の人とが一生懸命で闘っていますが、その女の人は見る見る蜘蛛から糸で巻きつけられてしまっているのが、窓からさし込んだ月の光りでよく見えます。

「おッ。あれは私の母の妃です。おのれ蜘蛛の奴」

 と云ううちに、王子は矢のように梯子段を駈け降りて行きました。

 オシャベリ姫はどうなることかと見ておりますと、梯子段を降りた王子は懐中から短刀を抜き出すや否や、たった一撃ちに蜘蛛の眼と眼の間へ突込んで殺してしまいますと、つづいて同じ短刀でお妃に巻きついた糸をズタズタに切り破ってお妃を助け出しました。

 オシャベリ姫はほっと安心しながら、なおもようすを見ていますと、お妃は嬉しさのあまり王子を犇(しっかり)と抱き締められましたが、やがてその手をゆるめて、手真似でどこかへ逃げるように王子に教えておられるようです。

 王子は地びたへ両手をついてお礼を云いました。

 そのうちに、お妃は涙を流しながら王子と別れて、表の方へ出て行かれました。

 それを見ていたオシャベリ姫は、急いで梯子段を降りて、王子の傍に行こうとしましたが、その時は何だかお城の中が急に騒々しくなったようで、風の音のきれ目きれ目に沢山の人の足音がするようですから、姫は外をのぞいて見ますと、大変です。

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