桜の森の満開の下(3/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
(678字。目安の読了時間:2分)
けれども山賊は落付いた男で、後悔ということを知らない男ですから、これはおかしいと考えたのです。
ひとつ、来年、考えてやろう。
そう思いました。
今年は考える気がしなかったのです。
そして、来年、花がさいたら、そのときじっくり考えようと思いました。
毎年そう考えて、もう十何年もたち、今年も亦、来年になったら考えてやろうと思って、又、年が暮れてしまいました。
そう考えているうちに、始めは一人だった女房がもう七人にもなり、八人目の女房を又街道から女の亭主の着物と一緒にさらってきました。
女の亭主は殺してきました。
山賊は女の亭主を殺す時から、どうも変だと思っていました。
いつもと勝手が違うのです。
どこということは分らぬけれども、変てこで、けれども彼の心は物にこだわることに慣れませんので、そのときも格別深く心にとめませんでした。
山賊は始めは男を殺す気はなかったので、身ぐるみ脱がせて、いつもするようにとっとと失せろと蹴とばしてやるつもりでしたが、女が美しすぎたので、ふと、男を斬りすてていました。
彼自身に思いがけない出来事であったばかりでなく、女にとっても思いがけない出来事だったしるしに、山賊がふりむくと女は腰をぬかして彼の顔をぼんやり見つめました。
今日からお前は俺の女房だと言うと、女はうなずきました。
手をとって女を引き起すと、女は歩けないからオブっておくれと言います。
山賊は承知承知と女を軽々と背負って歩きましたが、険しい登り坂へきて、ここは危いから降りて歩いて貰おうと言っても、女はしがみついて厭々、厭ヨ、と言って降りません。
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