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オツベルと象(3/10) - ブンゴウメール

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(605字。目安の読了時間:2分)

 ところが何せ、器械はひどく廻っていて、籾は夕立か霰のように、パチパチ象にあたるのだ。

象はいかにもうるさいらしく、小さなその眼を細めていたが、またよく見ると、たしかに少しわらっていた。

 オツベルはやっと覚悟をきめて、稲扱器械の前に出て、象に話をしようとしたが、そのとき象が、とてもきれいな、鶯みたいないい声で、こんな文句を云ったのだ。

「ああ、だめだ。あんまりせわしく、砂がわたしの歯にあたる。」

 まったく籾は、パチパチパチパチ歯にあたり、またまっ白な頭や首にぶっつかる。

 さあ、オツベルは命懸けだ。

パイプを右手にもち直し、度胸を据えて斯う云った。

「どうだい、此処は面白いかい。」

「面白いねえ。」象がからだを斜めにして、眼を細くして返事した。

「ずうっとこっちに居たらどうだい。」

 百姓どもははっとして、息を殺して象を見た。

オツベルは云ってしまってから、にわかにがたがた顫え出す。

ところが象はけろりとして

「居てもいいよ。」と答えたもんだ。

「そうか。それではそうしよう。そういうことにしようじゃないか。」オツベルが顔をくしゃくしゃにして、まっ赤になって悦びながらそう云った。

 どうだ、そうしてこの象は、もうオツベルの財産だ。

いまに見たまえ、オツベルは、あの白象を、はたらかせるか、サーカス団に売りとばすか、どっちにしても万円以上もうけるぜ。

第二日曜

 オツベルときたら大したもんだ。

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