おじいさんのランプ(15/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
(411字。目安の読了時間:1分)
とききかえしたので、嘘のきらいな巳之助は、自分でためして見る気になり、区長さんのところから古新聞をもらって来て、ランプの下にひろげた。
やはり区長さんのいわれたことはほんとうであった。
新聞のこまかい字がランプの光で一つ一つはっきり見えた。
「わしは嘘をいってしょうばいをしたことにはならない」と巳之助はひとりごとをいった。
しかし巳之助は、字がランプの光ではっきり見えても何にもならなかった。
字を読むことができなかったからである。
「ランプで物はよく見えるようになったが、字が読めないじゃ、まだほんとうの文明開化じゃねえ」
そういって巳之助は、それから毎晩区長さんのところへ字を教えてもらいにいった。
熱心だったので一年もすると、巳之助は尋常科を卒業した村人の誰にも負けないくらい読めるようになった。
そして巳之助は書物を読むことをおぼえた。
巳之助はもう、男ざかりの大人であった。
家には子供が二人あった。
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