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機械(25/30)

(863字。目安の読了時間:2分)

軽部は前後から殴り出されると主力を屋敷に向けて彼を蹴りつけようとしたので私は軽部を背後へ引いて邪魔をすると、その暇に屋敷は軽部を押し倒して馬乗りになってまた殴り続けた。
私は屋敷のそんなにも元気になったのに驚いたが幾分私が理由もなく殴られたので私が腹を立てて彼と一緒に軽部に向ってかかっていくにちがいないと思ったからであろう。
しかし、私はもうそれ以上は軽部に復讐する要もないのでまた黙って殴られている軽部を見ていると軽部は直ぐ苦もなく屋敷をひっくり返して上になって反対に彼を前より一層激しく殴り出した。
そうなると屋敷は一番最初と同じことでどうすることも出来ないのだ。
だが、軽部は暫く屋敷を殴っていてから私が背後から彼を襲うだろうと思ったのか急に立上ると私に向かって突っかかって来た。
軽部と一人同志の殴り合いなら私が負けるに決っているのでまた私は黙って屋敷の起き上って来るまで殴らせてやると、起き上って来た屋敷は不意に軽部を殴らずに私を殴り出した。
一人でも困るのに二人一緒に来られては私ももう仕方がないので床の上に倒れたまま二人のするままにさせてやったが、しかし私はさきからそれほどもいったい悪行をして来たのであろうか。
私は両腕で頭をかかえてまん丸くなりながら私のしたことが二人から殴られねばならぬそれほども悪いかどうか考えた。
なるほど私は事件の起り始めたときから二人にとっては意表外の行為ばかりをし続けていたにちがいない。
しかし、私以外の二人も私にとっては意外なことばかりをしたではないか。
だいいち私は屋敷から殴られる理由はない。
たとえ私が屋敷と一緒に軽部にかからなかったからとはいえ私をもそんなときにかからせてやろうなどと思った屋敷自身が馬鹿なのだ。
そう思ってはみても結局二人から、同時に殴られなかったのは屋敷だけで一番殴られるべき責任のある筈の彼が一番うまいことをしたのだから私も彼を一度殴り返すぐらいのことはしても良いのだがとにかくもうそのときはぐったり私たちは疲れていた。

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