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【ブンゴウメール】夢十夜 (3/29)

(784字。目安の読了時間:2分)


抱(だ)き上(あ)げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し 暖くなった。


 自分は苔(こけ)の上に坐った。
これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組を して、丸い墓石(はかいし)を眺めていた。
そのうちに、女の云った通り日が東から出た。
大きな赤い日であった。
それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。
赤いまんまでのっと落ちて行った。
一つと自分は勘定(かんじょう)した。


 しばらくするとまた唐紅(からくれない)の天道(てんとう)がの そりと上(のぼ)って来た。
そうして黙って沈んでしまった。
二つとまた勘定した。


 自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいく つ見たか分らない。
勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り 越して行った。
それでも百年がまだ来ない。
しまいには、苔(こけ)の生(は)えた丸い石を眺めて、自分は女 に欺(だま)されたのではなかろうかと思い出した。


 すると石の下から斜(はす)に自分の方へ向いて青い茎(くき)が 伸びて来た。
見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。
と思うと、すらりと揺(ゆら)ぐ茎(くき)の頂(いただき)に、 心持首を傾(かたぶ)けていた細長い一輪の蕾(つぼみ)が、ふっ くらと弁(はなびら)を開いた。
真白な百合(ゆり)が鼻の先で骨に徹(こた)えるほど匂った。
そこへ遥(はるか)の上から、ぽたりと露(つゆ)が落ちたので、 花は自分の重みでふらふらと動いた。
自分は首を前へ出して冷たい露の滴(したた)る、白い花弁(はな びら)に接吻(せっぷん)した。

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