【ブンゴウメール】夢十夜 (11/29)
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「真直かい」と神さんが聞いた時、ふうと吹いた息が、
爺さんが表へ出た。
自分も後から出た。
爺さんの腰に小さい瓢箪(ひょうたん)がぶら下がっている。
肩から四角な箱を腋(わき)の下へ釣るしている。
浅黄の股引を穿(は)いて、浅黄の袖無しを着ている。
足袋だけが黄色い。
何だか皮で作った足袋のように見えた。
爺さんが真直に柳の下まで来た。
柳の下に子供が三四人いた。
爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭を出した。
それを肝心綯のように細長く綯(よ)った。
そうして地面の真中に置いた。
それから手拭の周囲に、大きな丸い輪を描いた。
しまいに肩にかけた箱の中から真鍮で製らえた飴屋の笛を出した。
「今にその手拭が蛇になるから、見ておろう。見ておろう」
子供は一生懸命に手拭を見ていた。
自分も見ていた。
「見ておろう、見ておろう、好いか」
自分は手拭ばかり見ていた。
けれども手拭はいっこう動かなかった。
爺さんは笛をぴいぴい吹いた。
そうして輪の上を何遍も廻った。
草鞋を爪立てるように、抜足をするように、
怖そうにも見えた。
面白そうにもあった。
やがて爺さんは笛をぴたりとやめた。
そうして、肩に掛けた箱の口を開けて、手拭の首を、
「こうしておくと、箱の中で蛇になる。
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