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どんぐりと山猫(2/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(617字。目安の読了時間:2分)

栗の木はちよつとしづかになつて、

「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」と答へました。

「東ならぼくのいく方だねえ、をかしいな、とにかくもつといつてみよう。栗の木ありがたう。」

 栗の木はだまつてまた実をばらばらとおとしました。

 一郎がすこし行きますと、そこはもう笛ふきの滝でした。

笛ふきの滝といふのは、まつ白な岩の崖のなかほどに、小さな穴があいてゐて、そこから水が笛のやうに鳴つて飛び出し、すぐ滝になつて、ごうごう谷におちてゐるのをいふのでした。

 一郎は滝に向いて叫びました。

「おいおい、笛ふき、やまねこがここを通らなかつたかい。」

 滝がぴーぴー答へました。

「やまねこは、さつき、馬車で西の方へ飛んで行きましたよ。」

「をかしいな、西ならぼくのうちの方だ。けれども、まあも少し行つてみよう。ふえふき、ありがたう。」

 滝はまたもとのやうに笛を吹きつゞけました。

 一郎がまたすこし行きますと、一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、どつてこどつてこどつてこと、変な楽隊をやつてゐました。

 一郎はからだをかがめて、

「おい、きのこ、やまねこが、こゝを通らなかつたかい。」

とききました。

するときのこは

「やまねこなら、けさはやく、馬車で南の方へ飛んで行きましたよ。」とこたへました。

一郎は首をひねりました。

「みなみならあつちの山のなかだ。をかしいな。まあもすこし行つてみよう。

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