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どんぐりと山猫(3/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(630字。目安の読了時間:2分)

まあもすこし行つてみよう。きのこ、ありがたう。」

 きのこはみんないそがしさうに、どつてこどつてこと、あのへんな楽隊をつづけました。

 一郎はまたすこし行きました。

すると一本のくるみの木の梢を、栗鼠がぴよんととんでゐました。

一郎はすぐ手まねぎしてそれをとめて、

「おい、りす、やまねこがここを通らなかつたかい。」とたづねました。

するとりすは、木の上から、額に手をかざして、一郎を見ながらこたへました。

「やまねこなら、けさまだくらいうちに馬車でみなみの方へ飛んで行きましたよ。」

「みなみへ行つたなんて、二とこでそんなことを言ふのはをかしいなあ。けれどもまあもすこし行つてみよう。りす、ありがたう。」りすはもう居ませんでした。

たゞくるみのいちばん上の枝がゆれ、となりのぶなの葉がちらつとひかつただけでした。

 一郎がすこし行きましたら、谷川にそつたみちは、もう細くなつて消えてしまひました。

そして谷川の南の、まつ黒な榧の木の森の方へ、あたらしいちひさなみちがついてゐました。

一郎はそのみちをのぼつて行きました。

榧の枝はまつくろに重なりあつて、青ぞらは一きれも見えず、みちは大へん急な坂になりました。

一郎が顔をまつかにして、汗をぽとぽとおとしながら、その坂をのぼりますと、にはかにぱつと明るくなつて、眼がちくつとしました。

そこはうつくしい黄金いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まはりは立派なオリーヴいろのかやの木のもりでかこまれてありました。

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