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どんぐりと山猫(4/11) - ブンゴウメール

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(665字。目安の読了時間:2分)

そこはうつくしい黄金いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まはりは立派なオリーヴいろのかやの木のもりでかこまれてありました。

 その草地のまん中に、せいの低いをかしな形の男が、膝を曲げて手に革鞭をもつて、だまつてこつちをみてゐたのです。

 一郎はだんだんそばへ行つて、びつくりして立ちどまつてしまひました。

その男は、片眼で、見えない方の眼は、白くびくびくうごき、上着のやうな半纏のやうなへんなものを着て、だいいち足が、ひどくまがつて山羊のやう、ことにそのあしさきときたら、ごはんをもるへらのかたちだつたのです。

一郎は気味が悪かつたのですが、なるべく落ちついてたづねました。

「あなたは山猫をしりませんか。」

 するとその男は、横眼で一郎の顔を見て、口をまげてにやつとわらつて言ひました。

「山ねこさまはいますぐに、こゝに戻つてお出やるよ。おまへは一郎さんだな。」

 一郎はぎよつとして、一あしうしろにさがつて、

「え、ぼく一郎です。けれども、どうしてそれを知つてますか。」と言ひました。

するとその奇体な男はいよいよにやにやしてしまひました。

「そんだら、はがき見だべ。」

「見ました。それで来たんです。」

「あのぶんしやうは、ずゐぶん下手だべ。」と男は下をむいてかなしさうに言ひました。

一郎はきのどくになつて、

「さあ、なかなか、ぶんしやうがうまいやうでしたよ。」

と言ひますと、男はよろこんで、息をはあはあして、耳のあたりまでまつ赤になり、きもののえりをひろげて、風をからだに入れながら、

「あの字もなかなかうまいか。」

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