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黒猫(29/30)

(379字。目安の読了時間:1分)

 だが、神よ、魔王の牙より私を護りまた救いたまえ! 私の打った音の反響が鎮まるか鎮まらぬかに、その墓のなかから一つの声が私に答えたのであった! ――初めは、子供の啜り泣きのように、なにかで包まれたような、きれぎれな叫び声であったが、それから急に高まって、まったく異様な、人間のものではない、一つの長い、高い、連続した金切声となり、――地獄に墜ちてもだえ苦しむ者と、地獄に墜して喜ぶ悪魔との咽喉から一緒になって、ただ地獄からだけ聞えてくるものと思われるような、なかば恐怖の、なかば勝利の、号泣――慟哭するような悲鳴――となった。
 私自身の気持は語るも愚かである。
気が遠くなって、私は反対の側の壁へとよろめいた。
一瞬間、階段の上にいた一行は、極度の恐怖と畏懼とのために、じっと立ち止った。
次の瞬間には、幾本かの逞しい腕が壁をせっせとくずしていた。

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