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黒猫(14/30)

(430字。目安の読了時間:1分)

私は猫のいなくなったことを悔むようにさえなり、そのころ行きつけの悪所でそれの代りになる同じ種類の、またいくらか似たような毛並のものがいないかと自分のまわりを捜すようにもなった。
 ある夜、ごくたちの悪い酒場に、なかば茫然として腰かけていると、その部屋の主な家具をになっているジン酒かラム酒の大樽の上に、なんだか黒い物がじっとしているのに、とつぜん注意をひかれた。
私はそれまで数分間その大樽のてっぺんのところをじっと見ていたので、いま私を驚かせたことは、自分がもっと早くその物に気がつかなかったという事実なのであった。
私は近づいて行って、それに手を触れてみた。
それは一匹の黒猫――非常に大きな猫――で、プルートォくらいの大きさは十分あり、一つの点をのぞいて、あらゆる点で彼にとてもよく似ていた。
プルートォは体のどこにも白い毛が一本もなかったが、この猫は、胸のところがほとんど一面に、ぼんやりした形ではあるが、大きな、白い斑点で蔽われているのだ。

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