【ブンゴウメール】押絵と旅する男 (7/31)
(678字。目安の読了時間:2分)
私は彼と向き合ったクッションへ、そっと腰をおろし、近寄れば一層異様に見える彼の皺だらけの白い顔を、私自身が妖怪ででもある様な、一種不可思議な、顛倒した気持で、目を細く息を殺してじっと覗き込んだものである。
男は、私が自分の席を立った時から、ずっと目で私を迎える様にしていたが、そうして私が彼の顔を覗き込むと、待ち受けていた様に、顎で傍らの例の扁平な荷物を指し示し、何の前置きもなく、さもそれが当然の挨拶ででもある様に、
「これでございますか」
と云った。
その口調が、余り当り前であったので、私は却て、ギョッとした程であった。
「これが御覧になりたいのでございましょう」
私が黙っているので、彼はもう一度同じことを繰返した。
「見せて下さいますか」
私は相手の調子に引込まれて、つい変なことを云ってしまった。
私は決してその荷物を見たい為に席を立った訳ではなかったのだけれど。
「喜んで御見せ致しますよ。わたくしは、さっきから考えていたのでございますよ。あなたはきっとこれを見にお出でなさるだろうとね」
男は――寧ろ老人と云った方がふさわしいのだが――そう云いながら、長い指で、器用に大風呂敷をほどいて、その額みたいなものを、今度は表を向けて、窓の所へ立てかけたのである。
私は一目チラッと、その表面を見ると、思わず目をとじた。
何故であったか、その理由は今でも分らないのだが、何となくそうしなければならぬ感じがして、数秒の間目をふさいでいた。
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