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【ブンゴウメール】押絵と旅する男 (19/31)

(673字。目安の読了時間:2分) まさか兄がこんな所へ、毎日毎日通っていようとは、夢にも存じませんので、私はあきれてしまいましたよ。 子供心にね、私はその時まだ二十にもなってませんでしたので、兄はこの十二階の化物に魅入られたんじゃないかなんて、変なことを考えたものですよ。  私は十二階へは、父親につれられて、一度昇った切りで、その後行ったことがありませんので、何だか気味が悪い様に思いましたが、兄が昇って行くものですから、仕方がないので、私も、一階位おくれて、あの薄暗い石の段々を昇って行きました。 窓も大きくございませんし、煉瓦の壁が厚うござんすので、穴蔵の様に冷々と致しましてね。 それに日清戦争の当時ですから、その頃は珍らしかった、戦争の油絵が、一方の壁にずっと懸け並べてあります。 まるで狼みたいな、おっそろしい顔をして、吠えながら、突貫している日本兵や、剣つき鉄砲に脇腹をえぐられ、ふき出す血のりを両手で押さえて、顔や唇を紫色にしてもがいている支那兵や、ちょんぎられた辮髪の頭が、風船玉の様に空高く飛上っている所や、何とも云えない毒々しい、血みどろの油絵が、窓からの薄暗い光線で、テラテラと光っているのでございますよ。 その間を、陰気な石の段々が、蝸牛の殻みたいに、上へ上へと際限もなく続いて居ります。 本当に変てこれんな気持ちでしたよ。  頂上は八角形の欄干丈けで、壁のない、見晴らしの廊下になっていましてね、そこへたどりつくと、俄(にわか)にパッと明るくなって、今までの薄暗い道中が長うござんしただけに、びっくりしてしまいます。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/me2p48 ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56645_58203.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] Facebookを使って、みんなに知られず婚活ができる神アプリ!毎月4000人以上に恋人ができている実績あり。まずは試してみて! ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/kvdRBG ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*