【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (2/30)
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「この町は、祭でもあるらしい、降りてみんかやのう」
母も経文を合財袋にしまいながら、立ちあがった。
「ほんとに、綺麗な町じゃ、まだ陽が高いけに、降りて弁当の代でも稼ぎまっせ」
で、私達三人は、おのおのの荷物を肩に背負って、日の丸の旗のヒラヒラした海辺の町へ降りた。
駅の前には、白く芽立った大きな柳の木があった。
柳の木の向うに、煤(すす)で汚れた旅館が二三軒並んでいた。
町の上には大きい綿雲が飛んで、看板に魚の絵が多かった。
浜通りを歩いていると、ある一軒の魚の看板の出た家から、ヒュッ、ヒュッ、と口笛が流れて来た。
父はその口笛を聞くと、背負った風琴を思い出したのであろうか、風呂敷包みから風琴を出して肩にかけた。
父の風琴は、おそろしく古風で、大きくて、肩に掛けられるべく、皮のベルトがついていた。
「まだ鳴らしなさるな」
母は、新しい町であったので、恥しかったのであろう、ちょっと父の腕をつかんだ。
口笛の流れて来る家の前まで来ると、鱗(うろこ)まびれになった若い男達が、ヒュッ、ヒュッ、と口笛に合せて魚の骨を叩(たた)いていた。
看板の魚は、青笹の葉を鰓(あぎと)にはさんだ鯛(たい)であった。
私達は、しばらく、その男達が面白い身ぶりでかまぼこをこさえている手つきに見とれていた。
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