月の詩情(1/6) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
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昔は多くの詩人たちが、月を題材にして詩を作つた。
支那では李白や白楽天やが、特に月の詩人として有名だが、日本では西行や芭蕉を初め、もつと多くの詩人等が月を歌つた。
西洋でも、Moonlight の月光を歌つた詩は、東洋に劣らないほど沢山ある。
かうした多くの月の詩篇は、すべて皆その情操に、悲しい音楽を聴く時のやうな、無限のノスタルヂアが本質して居り、多くは失恋や孤独の悲哀を、その抒情の背景に揺曳させてゐる。
月とその月光が、何故にかくも昔から、多くの詩人の心を傷心せしめたらうか。
思ふにその理由は、月光の青白い光が、メランコリツクな詩的な情緒を、人の心に強く呼び起させることにもよる。
だがもつと本質的な原因は、それが広茫極みなき天の穹窿で、無限の遠方にあるといふことである。
なぜならすべて遠方にある者は、人の心に一種の憧憬と郷愁を呼び起し、それ自らが抒情詩のセンチメントになるからである。
しかもそれは、単に遠方にあるばかりではない。
いつも青白い光を放散して、空の灯火の如く煌々と輝やいてゐるのである。
そこで自分は、生物の不可思議な本能であるところの、向火性といふことに就いて考へてゐる。
獣類と、鳥類と、昆虫との別を問はず、殆んどすべての生物は、夜の灯火に対して不思議なイメーヂと思慕を持つてゐる。
海の魚介類は、漁師の漁る灯火の下に、群をなして集つて来るし、山野に生棲する昆虫類は、人家の灯火や弧灯に向つて、蛾群の羽ばたきを騒擾する。
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