オツベルと象(9/10) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
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わざと力を減らしてあるんだ。ようし、もう五六本持って来い。さあ、大丈夫だ。大丈夫だとも。あわてるなったら。おい、みんな、こんどは門だ。門をしめろ。かんぬきをかえ。つっぱり。つっぱり。そうだ。おい、みんな心配するなったら。しっかりしろよ。」オツベルはもう支度ができて、ラッパみたいないい声で、百姓どもをはげました。
ところがどうして、百姓どもは気が気じゃない。
こんな主人に巻き添いなんぞ食いたくないから、みんなタオルやはんけちや、よごれたような白いようなものを、ぐるぐる腕に巻きつける。
降参をするしるしなのだ。
オツベルはいよいよやっきとなって、そこらあたりをかけまわる。
オツベルの犬も気が立って、火のつくように吠えながら、やしきの中をはせまわる。
間もなく地面はぐらぐらとゆられ、そこらはばしゃばしゃくらくなり、象はやしきをとりまいた。
グララアガア、グララアガア、その恐ろしいさわぎの中から、
「今助けるから安心しろよ。」やさしい声もきこえてくる。
「ありがとう。よく来てくれて、ほんとに僕はうれしいよ。」象小屋からも声がする。
さあ、そうすると、まわりの象は、一そうひどく、グララアガア、グララアガア、塀のまわりをぐるぐる走っているらしく、度々中から、怒ってふりまわす鼻も見える。
けれども塀はセメントで、中には鉄も入っているから、なかなか象もこわせない。
塀の中にはオツベルが、たった一人で叫んでいる。
百姓どもは眼もくらみ、そこらをうろうろするだけだ。
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