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老妓抄(16/30) - ブンゴウメール

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(607字。目安の読了時間:2分)

生れてこんなこと始めてだ」

「麦とろの食べ過ぎかね」老妓は柚木がよく近所の麦飯ととろろを看板にしている店から、それを取寄せて食べるのを知っているものだから、こうまぜっかえしたが、すぐ真面目になり「そんなときは、何でもいいから苦労の種を見付けるんだね。苦労もほどほどの分量にゃ持ち合せているもんだよ」

 それから二三日経って、老妓は柚木を外出に誘った。

連れにはみち子と老妓の家の抱えでない柚木の見知らぬ若い芸妓が二人いた。

若い芸妓たちは、ちょっとした盛装をしていて、老妓に

「姐さん、今日はありがとう」と丁寧に礼を云った。

 老妓は柚木に

「今日は君の退屈の慰労会をするつもりで、これ等の芸妓たちにも、ちゃんと遠出の費用を払ってあるのだ」と云った。

「だから、君は旦那になったつもりで、遠慮なく愉快をすればいい」

 なるほど、二人の若い芸妓たちは、よく働いた。

竹屋の渡しを渡船に乗るときには年下の方が柚木に「おにいさん、ちょっと手を取って下さいな」と云った。

そして船の中へ移るとき、わざとよろけて柚木の背を抱えるようにして掴った。

柚木の鼻に香油の匂いがして、胸の前に後襟の赤い裏から肥った白い首がむっくり抜き出て、ぼんの窪の髪の生え際が、青く霞めるところまで、突きつけたように見せた。

顔は少し横向きになっていたので、厚く白粉をつけて、白いエナメルほど照りを持つ頬から中高の鼻が彫刻のようにはっきり見えた。

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