おじいさんのランプ(4/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
(478字。目安の読了時間:1分)
ねえやにお茶をいいつけておいて、すっぽんと煙管筒をぬきながら、こういった。
「東坊、このランプはな、おじいさんにはとてもなつかしいものだ。長いあいだ忘れておったが、きょう東坊が倉の隅から持出して来たので、また昔のことを思い出したよ。こうおじいさんみたいに年をとると、ランプでも何でも昔のものに出合うのがとても嬉しいもんだ」
東一君はぽかんとしておじいさんの顔を見ていた。
おじいさんはがみがみと叱りつけたから、怒っていたのかと思ったら、昔のランプに逢うことができて喜んでいたのである。
「ひとつ昔の話をしてやるから、ここへ来て坐れ」
とおじいさんがいった。
東一君は話が好きだから、いわれるままにおじいさんの前へいって坐ったが、何だかお説教をされるときのようで、いごこちがよくないので、いつもうちで話をきくときにとる姿勢をとって聞くことにした。
つまり、寝そべって両足をうしろへ立てて、ときどき足の裏をうちあわせる芸当をしたのである。
おじいさんの話というのは次のようであった。
今から五十年ぐらいまえ、ちょうど日露戦争のじぶんのことである。
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