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ジャン・クリストフ(7/31)

(499字。目安の読了時間:1分)

戯曲家としての才能か、音楽家としての才能か、歌い手としての才能か、または舞踊家としての才能か。
彼はそのいちばんおしまいのものだと思いたかった。
なぜなら、それを立派な才能だと思っていたから。
 それから一週間たって、クリストフがそのことをすっかり忘れてしまった頃、祖父はもったいぶった様子で、彼に見せるものがあるといった。
そして机をあけて、中から一冊の楽譜帖をとり出し、ピアノの楽譜台にのせて、弾いてごらんといった。
クリストフは大変困ったが、どうかこうか読み解いていった。
その楽譜は、老人の太い書体で特別に念をいれて書いてあった。
最初のところには輪や花形の飾がついていた。
――祖父はクリストフのそばに坐(すわ)ってページをめくってやっていたが、やがて、それは何の音楽かと尋ねた。
クリストフは弾くのに夢中になっていて、何を弾いてるのやらさっぱりわからなかったので、知らないと答えた。
「気をつけてごらん。それがわからないかね。」
 そうだ、たしかに知っていると彼は思った。
しかし、どこで聞いたのかわからなかった。
……祖父は笑っていた。
「考えてごらん。」

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