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科学の不思議(27/30)

(826字。目安の読了時間:2分)

のろまな牝牛共は、その群がだん/\まばらになつて来て、恐ろしい事が近づいて来ると云ふ事も知らないのだ。
捕まつた木虱は獅子の牙の間でもがいてゐる。
他の者は何の出来事もないやうに呑気にたべつづけてゐる。
『此の木虱の獅子は、腹の中のものが消化するまで、牝牛共の中に気楽にうづくまつてゐる。
けれどもその消化は非常に早い。
そしてその間にもう此のガツ/\した虫は、直ぐに噛み砕くであらう次の木虱をねらつてゐるのだ。
すべての木虱共が嫩芽をたべてゆく後から、丁度そのやうにして二週間の間その牝牛共をたべつゞけたあとで、此の虫は金のやうによく光る眼の、きれいな、草蜻蛉と云ふ小さい蜻蛉(とんぼ)になるのだ。
『それでおしまひか?と云ふに、どうしてどうして! まだ瓢虫といふのがある。
それは円くて赤い虫で、黒い幾つもの斑点がある。
大変気持のいゝ虫で、無邪気な様子をしてゐる。
此の虫が又ガツガツの大食ひだとは誰れも気がつくまい。
その胃袋は木虱で一ぱいにされてゐるのだ。
薔薇藪でそつと調べたら、お前達はその兇猛な御馳走のたべぶりを見る事が出来るだらう。
瓢虫は大変きれいだ。
そして無邪気らしく見える。
けれども大食家だ。
木虱が大好きなのだ。
『それでおしまひか? まだ/\! 可哀想な木虱共はマンナなのだ。
マンナと云ふのは古代イスラエル人が荒野を旅行する時に用ゐた食物の名だ。
それはあらゆる種類の大食家共の常食だ。
雛鳥がたべる。
草蜻蛉がたべる。
てんとうむしがたべる。
すべての大食家共が木虱をたべるのだ。
そして、なほそれでも、何時でも木虱はゐる。
何処にでもゐる。
こゝに、いくら殺されても猶どし/\生んで行くといふ多産と、それを又どし/\殺して行くといふの戦ひがあるのだ。
そして弱いものは其の絶滅の機会を免れようとして、殺されても猶いくらでも生んで行つて、遂にそれに打ち勝つのだ。

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