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絵のない絵本(57/59)

(844字。目安の読了時間:2分)

しかし、十一歳のときに父を失うに及んで、この幸福の夢もはかなく消え去ってしまった。
母は仕立屋の職人にしたいという希望を持っていたが、アンデルセンみずからは舞台に立つことを望んで、十四歳のときただひとり首都のコペンハーゲンをめざして旅立った。
このときから彼にとって新しい世界が開かれるとともに、茨の道がはじまったのである。
すなわち都に出るには出たものの、何もかもが彼の希望に反してしまった。
俳優として舞台に立つこともかなえられず、持って生れた美声を頼りに志望した声楽家にもなることができないままに、いくどか絶望のどん底におちいった。
しかし幸いなことにも、一生の恩人であるコリンに見いだされたのはこのような失意のときであった。
それまでは学校教育もろくに受けておらず、物を書くのにも綴(つづ)りがまちがいだらけというありさまであったが、このコリンの助力のおかげで学校へも行けるようになったのである。
 アンデルセンは一生のあいだ旅から旅へとさすらって歩いた。
旅こそは彼から切り離すことのできないものであった。
一八三一年に初めて国外への旅行を行い、つづいて一八三三年にはドイツ、フランスをへてイタリアへの旅にのぼった。
このときの旅行のあいだに、その印象をもととして書いたのが『即興詩人 Improvisatoren』(一八三五年)であって、この作によって初めて彼の名は国の内外に認められるようになった。
『ただのバイオリン弾き Kun en Spilmand』とか、ここに訳出した『絵のない絵本 Billedbog uden Billeder』や、『スウェーデンにて I Sverige』、『わが生涯の物語 Mit Livs Eventyr』をはじめ、彼のほとんどすべての作品はこのとき以後のものである。
童話についても同様、『即興詩人』が出版されてから二、三カ月後にはじめて第一集が出、それから一八七五年八月四日に永眠するまでに百五、六十にも及ぶ多数の童話が書かれたのである。

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