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幸福への意志(2/30)

(561字。目安の読了時間:2分)

その連中は横腹を突つき合いながら、冷酷ににやにや笑っていた。
 こんな調子で怪物どもに取り囲まれていたので、僕等ははじめから、互いに惹きつけられるような気がした。
だから、赤紫の教育家が僕等を隣同士に坐らせてくれた時には、嬉しかった。
それ以来、僕等は団結してしまって、共々に教育の基礎を築いたり、毎日、弁当のパンの交易を営んだりした。
 思い出して見れば、彼はしかしもうその時分から虚弱だった。
時々かなり長く学校を休まされたが、再び出てくると、いつも彼のこめかみと頬には、平生よりなお明らかに、薄青い脈管が現われていた。
かぼそい、浅黒い肌の人に限って、よくあるやつである。
彼のはその後もずっと消えなかった。
このミュンヘンで再会した時にも、それからあとロオマで逢った時にも、第一番に僕の眼についたのはそれだった。
 僕等の友情は、それが成立したのとほぼ同じ理由で、ずっと学校時代を通じて継続した。
理由とは、同級生の大多数に対する「距離の感激」である。
十五歳でひそかにハイネを読み、中学三四年ぐらいで、世界人類の上に断乎たる批判をくだすほどの者なら、誰でも知っているあの感激である。
 僕等はまた――二人とも十六だったと思うが――一緒に踊の稽古にも行って、その結果、共々に初恋を経験した。

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