【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (9/30)
(580字。目安の読了時間:2分)
その広場を囲んで、露店のうどん屋が鳥のように並んで、仲士達が立ったまま、つるつるとうどんを啜っていた。
露店の硝子箱(ガラスばこ)には、煎餅や、天麩羅がうまそうであった。
私は硝子箱に凭(もた)れて、煎餅と天麩羅をじっと覗(のぞ)いた。
硝子箱の肌には霧がかかっていた。
「どこの子なア、そこへ凭れちゃいけんがのう!」
乳房を出した女が赤ん坊の鼻汁を啜りながら私を叱(しか)った。
4 山の朱い寺の塔に灯がとぼった。
島の背中から鰯雲が湧いて、私は唄をうたいながら、波止場の方へ歩いた。
桟橋には灯がついたのか、長い竿(さお)の先きに籠をつけた物売りが、白い汽船の船腹をかこんで声高く叫んでいた。
母は待合所の方を見上げながら、桟橋の荷物の上に凭れていた。
「何ばしよったと、お父さん見て来たとか?」
「うん、見て来た! 山のごツ売れよった」
「ほんまな?」
「ほんま!」
私の腰に、また紫の包みをくくりつけてくれながら、母の眼は嬉(うれ)し気であった。
「ぬくうなった、風がぬるぬるしよる」
「小便がしたか」
「かまうこたなか、そこへせいよ」
桟橋の下にはたくさん藻や塵芥(じんかい)が浮いていた。
==============================================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
[PR] Facebookを使って、みんなに知られず婚活ができる神アプリ!毎月4000人以上に恋人ができている実績あり。まずは試してみて!
▼ ▽ ▼
https://goo.gl/kvdRBG
==============================================
Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list:
*|UNSUB|*