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【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (6/30)

(599字。目安の読了時間:2分)  遠いとこさ、一人で行ってしまいたか」 「お前は、めんめさえよければ、ええとじゃけに、バナナも食うつろが、蓮根も食いよって、富限者の子供でも、そげんな食わんぞな!」 「富限者の子供は、いつも甘美かもの食いよっとじゃもの、あぎゃん腐ったバナナば、恩にきせよる……」 「この子は、嫁様にもなる年頃で、食うこツばかり云いよる」 「ぴんたば殴るけん、ほら、鼻血が出つろうが……」  母は合財袋の中からセルロイドの櫛(くし)を出して、私の髪をなでつけた。 私の房々した髪は櫛の歯があたるたびに、パラパラ音をたてて空へ舞い上った。 「わんわんして、火がつきゃ燃えつきそうな頭じゃ」  櫛の歯をハーモニカのように口にこすって、唾をつけると、母は私の額の上の捲毛をなでつけて云った。 「お父さんが商売があってみい、何でも買うてやるがの……」  3 私は背中の荷物を降ろしてもらった。  紫の風呂敷包みの中には、絵本や、水彩絵具や、運針縫いがはいっていた。 「風琴ばかり鳴らしよるが、商いがあったとじゃろか、行ってみい!」  私は桟橋を駆け上って、坂になった町の方へ行った。  町が狭隘いせいか、犬まで大きく見える。 町の屋根の上には、天幕がゆれていて、桜の簪(かんざし)を差した娘達がゾロゾロ歩いていた。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 忙しいあなたも、耳は意外とヒマしてる!耳で読書できる便利アプリ。好みの一冊があるか、ぜひ調べてみよう! ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/xL67HL ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*