【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (6/30)
(599字。目安の読了時間:2分)
遠いとこさ、一人で行ってしまいたか」
「お前は、めんめさえよければ、ええとじゃけに、バナナも食うつろが、蓮根も食いよって、富限者の子供でも、そげんな食わんぞな!」
「富限者の子供は、いつも甘美かもの食いよっとじゃもの、あぎゃん腐ったバナナば、恩にきせよる……」
「この子は、嫁様にもなる年頃で、食うこツばかり云いよる」
「ぴんたば殴るけん、ほら、鼻血が出つろうが……」
母は合財袋の中からセルロイドの櫛(くし)を出して、私の髪をなでつけた。
私の房々した髪は櫛の歯があたるたびに、パラパラ音をたてて空へ舞い上った。
「わんわんして、火がつきゃ燃えつきそうな頭じゃ」
櫛の歯をハーモニカのように口にこすって、唾をつけると、母は私の額の上の捲毛をなでつけて云った。
「お父さんが商売があってみい、何でも買うてやるがの……」
3 私は背中の荷物を降ろしてもらった。
紫の風呂敷包みの中には、絵本や、水彩絵具や、運針縫いがはいっていた。
「風琴ばかり鳴らしよるが、商いがあったとじゃろか、行ってみい!」
私は桟橋を駆け上って、坂になった町の方へ行った。
町が狭隘いせいか、犬まで大きく見える。
町の屋根の上には、天幕がゆれていて、桜の簪(かんざし)を差した娘達がゾロゾロ歩いていた。
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