【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (5/30)
(578字。目安の読了時間:2分)
「汽車へ乗ったら、またよかもの食わしてやるけに……」
「いんにゃ、章魚が食いたか!」
「さっち、そぎゃん、困らせよっとか?」
母は房のついた縞(しま)の財布を出して私の鼻の上で振って見せた。
「ほら、これでも得心のいかぬか!」
薄い母の掌に、緑の粉を吹いた大きい弐銭銅貨が二三枚こぼれた。
「白か銭は無かろうが? 白かとがないと、章魚の足は買えんとぞ」
「あかか銭じゃ買えんとな?」
「この子は! さっち、あげんこツウ、お父さんや、おッ母さんが食えんでも、めんめが腹ばい肥やしたかなア」
「食いたかもの、仕様がなかじゃなっか!」
母はピシッと私のビンタを打った。
学校帰りの子供達が、渡し船を待っていた。
私が殴られるのを見ると、子供達はドッと笑った。
鼻血が咽へ流れて来た。
私は青い海の照り返りを見ながら、塩っぱい涙を啜(すす)った。
「どこさか行ってしまいたい」
「どこさか行く云うても、お前がとのような意地っぱりは、人が相手にせんと……」
「相手にせんちゃよか! 遠いとこさ、一人で行ってしまいたか」
「お前は、めんめさえよければ、ええとじゃけに、バナナも食うつろが、蓮根も食いよって、富限者の子供でも、そげんな食わんぞな!」
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