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麦藁帽子(10/31)

(569字。目安の読了時間:2分)

むしろ、そんな薄情な奴になるより、嘘つきになった方がましだ。
 私は頬をふくらませて、何も云わずに、汗を拭いていた。
どうも、さっきから、あの夾竹桃の薄紅い花が目ざわりでいけない。
 この二三日、お前は、鼠色の、だぶだぶな海水着をきている。
お前はそれを着るのをいやがっていた。
いままでのお前の海水着には、どうしたのか、胸のところに大きな心臓型の孔があいてしまったのだ。
そこでお前は間に合わせに、あんまり海へはいらない、お前の姉の奴を、借りて着ているのだ。
この村では、新しい海水着などは手に入らなかった。
一里ばかり向うの、駅のある町まで買いに行かなければ。
――そこで或る日、私はテニスの失敗をつぐなう積りで、自分から、その使者を申し出た。
「何処かで自転車を貸してくれるかしら?」
「理髪店のならば……」
 私は大きな海水帽をかぶって、炎天の下を、その理髪店の古ぼけた自転車に跨(またが)って、出発した。
 その町で、私は数軒の洋品店を捜し廻った。
少女用の海水着の買物がなんと私の心を奪ったことか! 私はお前に似合いそうな海水着を、とっくに見つけてしまってからも、私はただ私自身を満足させるために、いつまでも、それを選んでいるように見せかけた。
それから私は郵便局で、私の母へ宛てて電報を打った。

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