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【ブンゴウメール】夢十夜 (21/29)

(643字。目安の読了時間:2分)

 

 

第八夜


 床屋の敷居を跨(また)いだら、白い着物を着てかたまっていた三 四人が、一度にいらっしゃいと云った。


 真中に立って見廻すと、四角な部屋である。
窓が二方に開いて、残る二方に鏡が懸っている。
鏡の数を勘定したら六つあった。


 自分はその一つの前へ来て腰をおろした。
すると御尻がぶくりと云った。
よほど坐り心地が好くできた椅子である。
鏡には自分の顔が立派に映った。
顔の後には窓が見えた。
それから帳場格子が斜に見えた。
格子の中には人がいなかった。
窓の外を通る往来の人の腰から上がよく見えた。


 庄太郎が女を連れて通る。
庄太郎はいつの間にかパナマの帽子を買って被っている。
女もいつの間に拵(こし)らえたものやら。
ちょっと解らない。
双方とも得意のようであった。
よく女の顔を見ようと思ううちに通り過ぎてしまった。


 豆腐屋が喇叭(らっぱ)を吹いて通った。
喇叭を口へあてがっているんで、頬(ほっ)ぺたが蜂に螫(さ)さ れたように膨れていた。
膨れたまんまで通り越したものだから、気がかりでたまらない。
生涯蜂に螫されているように思う。


 芸者が出た。
まだ御化粧をしていない。
島田の根が緩んで、何だか頭に締りがない。
顔も寝ぼけている。
色沢が気の毒なほど悪い。
それで御辞儀をして、どうも何とかですと云ったが、相手はどうし ても鏡の中へ出て来ない。

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