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【ブンゴウメール】夢十夜 (26/29)

(697字。目安の読了時間:2分)

 


 子供はよくこの鈴の音で眼を覚まして、四辺を見ると真暗だものだ から、急に背中で泣き出す事がある。
その時母は口の内で何か祈りながら、背を振ってあやそうとする。
すると旨く泣きやむ事もある。
またますます烈しく泣き立てる事もある。
いずれにしても母は容易に立たない。


 一通り夫の身の上を祈ってしまうと、今度は細帯を解いて、背中の 子を摺(ず)りおろすように、背中から前へ廻して、両手に抱きな がら拝殿を上って行って、「好い子だから、少しの間、 待っておいでよ」ときっと自分の頬を子供の頬へ擦りつける。
そうして細帯を長くして、子供を縛っておいて、その片端を拝殿の 欄干に括りつける。
それから段々を下りて来て二十間の敷石を往ったり来たり御百度を 踏む。


 拝殿に括りつけられた子は、暗闇の中で、細帯の丈のゆるす限り、 広縁の上を這(は)い廻っている。
そう云う時は母にとって、はなはだ楽な夜である。
けれども縛った子にひいひい泣かれると、母は気が気でない。
御百度の足が非常に早くなる。
大変息が切れる。
仕方のない時は、中途で拝殿へ上って来て、いろいろすかしておい て、また御百度を踏み直す事もある。


 こう云う風に、幾晩となく母が気を揉(も)んで、夜の目も寝ずに 心配していた父は、とくの昔に浪士のために殺されていたのである 。


 こんな悲い話を、夢の中で母から聞いた。

 

第十夜


 庄太郎が女に攫(さら)われてから七日目の晩にふらりと帰って来 て、急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせ に来た。

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