【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (18/30)
(583字。目安の読了時間:2分)
「ま、勉強せい、明日は連れて行ってやる」
学校に行けることは、不安なようで嬉しい事であった。
その晩、胸がドキドキして、私は子供らしく、いつまでも瞼(まぶた)の裏に浮んで来る白い数字を数えていた。
十二時頃ででもあったであろうか、ウトウトしかけていると、裏の井戸で、重石か何か墜ちたように凄まじい水音がした。
犬も猫も、井戸が深いので今までは墜ちこんでも嘗めるような水音しかしないのに、それは、聞き馴(な)れない大きい水音であった。
「おッ母さん! 何じゃろか?」
「起きとったか、何じゃろかのう……」
そう話しあっている時、また水をはねて、何か悲しげな叫び声があがった。
階下のおじさんが、わめきながら座敷を這っている。
「あんた! 起きまっせ! 井戸ん中へ誰か墜ちたらしかッ」
「誰が?」
「起きて、早よう行ってくれまっせ、おばさんかも判らんけに……」
私は体がガタガタ震えて、もう、ものが云えなかった。
「どぎゃんしたとじゃろか?」
「お前も一緒に来いや、こまい者は寝とらんかッ!」
父は呶鳴りながら梯子段を破るようにドンドン降りて行った。
私一人になると、周囲から空気が圧して来た。
私はたまらなくなって、雨戸を開き、障子を開けた。
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