【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (28/30)
(574字。目安の読了時間:2分)
「早よう売らな腐る云いよった」
「そぎゃん、ひどかもん売ってもよかろか?」
「ハテ、良かろか、悪かろか、食えんもな、仕様がなかじゃなッか」
尾の道の町はずれに吉和と云う村があった。
帆布工場もあって、女工や、漁師の女達がたくさんいた。
父はよくそこへ出掛けて行った。
私は、こういうハイカラな商売は好きだと思った。
私は、赤い瓶を一ツ盗んで、はんど甕の横に隠しておいた。
「時勢が進むと、安うて、ハイカラなものが出来るもんかなア」
町中「一瓶つければ桜色」の唄が流行った。
化粧水は、持って出るたび、よく売れて行った。
その頃、籠の中へ、牛肉を入れて売って歩く婆さんが来た。
もうけがあるのであろう、母は気前よく、よくそれを買った。
蒟蒻(こんにゃく)を入れると、血のような色になって、「犬の肉ででもあっとじゃろ」と、三人とも安いのでよく、その赤い肉を食った。
「やっぱし、犬の肉でやんすで」
階下のおばさんは、買った肉を犬にくれたら、やっぱし食わなかったと、それが犬の肉である事を保証した。
雨がカラリと霽(は)れた日が来た。
ある日、山の学校から帰って来ると、母が、息を詰めて泣いていた。
「どぎゃん、したと?」
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