【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (29/30)
(564字。目安の読了時間:2分)
「どぎゃん、したと?」
「お父さんが、のう……警察い行きなはった」
私は、この時の悲しみを、一生忘れないだろう。
通草のように瞼が重くなった。
「おッ母さんな、警察い、ちょっと行って来ッで、ええ子して待っとれ」
「わしも行く。――わしも云うたい、お父さん帰るごと」
「子供が行ったっちゃ、おごらるるばかり、待っとれ!」
「うんにゃ! うんにゃ! 一人じゃ淋(さび)しか!」
「ビンタばやろかいッ!」
母が出て行った後、私は、オイオイ泣いた。
階下のおばさんが、這い上って来て、一緒に傍に横になってくれても、私は声をあげて泣いた。
「お父さんが云わしたばい、あア、おばっさん! 戦争の時、鑵詰に石ぶち込んで、成金さなったものもあるとじゃもの、俺がとは砂粒よか、こまかいことじゃ云うて……」
「泣きなはんな、お父さんは、ちっとも悪うはなかりゃん、あれは製造する者が悪いんじゃけのう」
「どぎゃんしても俺や泣く! 飯ば食えんじゃなっか!」
私は、夕方町の中の警察へ走って行った。
唐草模様のついた鉄の扉に凭れて、父と母が出て来るのを待った。
「オンバラジャア、ユウセイソワカ」私は、鉄の棒を握って、何となく空に祈った。
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