【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (17/30)
(565字。目安の読了時間:2分)
「人の足折って、知らん顔しちょるもんがよオ」
「金を持っちょるけに、かなわんたい」
「階下のおじさんな、馬鹿たれか?」
「何ば云よっとか!」
父は風琴と弁当を持って、一日中、「オイチニイ オイチニイ」と、町を流して薬を売って歩いた。
「漁師町に行ってみい、オイチニイの薬が来たいうて、皆出て来るけに」
「風体が珍しかけにな」
長いこと晴れた日が続いた。
山では桜の花が散って、いっせいに四囲が青ばんで来た。
遠くで初蛙も啼(な)いた。
白い除虫菊の花も咲いた。
7 「学校へ行かんか?」
ある日、山の茶園で、薔薇(ばら)の花を折って来て石榴の根元に植えていたら、商売から帰った父が、井戸端で顔を洗いながら、私にこう云った。
「学校か? 十三にもなって、五年生にはいるものはなかもの、行かぬ」
「学校へ行っとりゃ、ええことがあるに」
「六年生に入れてくれるかな?」
「沈黙っとりゃ、六年生でも入れようたい、よう読めるとじゃもの……」
「そんでも、算術はむずかしかろな?」
「ま、勉強せい、明日は連れて行ってやる」
学校に行けることは、不安なようで嬉しい事であった。
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