【ブンゴウメール】オシャベリ姫 (4/31)
(893字。目安の読了時間:2分)
糸を噛み切った蜘蛛は、寄ってたかって女中を喰い殺してしまいました」
「ヤア、それは大変だ」
「何という可愛想なことでしょう」
と云ううちに王様とお妃様は立ち上がって、急いで機織部屋に行こうとなさいました。
オシャベリ姫は慌ててそれを押し止めていいました。
「まあ、お父様お母様、おききなさい……それがやっぱり夢なのですよ……」
「何だ、それも夢か?」
「まあ、お前は何ておしゃべりなのだろう」
と王様とお妃様は又椅子に腰をおかけになりました。
そうして王様は真赤に怒ってオシャベリ姫をお睨(にら)みになりました。
「この馬鹿姫め。お前みたようなよけいな事をオシャベリする奴はいない。この上そんなことをオシャベリしたら石の牢屋へ入れてしまうぞ」
と大きな声でお叱りになりました。
「これから本当のことをお話しなさい。ね、いい子だから」
とお母様のお妃様がおとりなしになりました。
けれどもオシャベリ姫は平気でこう云いました。
「いいえ。これからが本当なのです。今までのは今度の本当におもしろいお話をするためにお話ししたのです」
「何……これからが本当に面白い話だと云うのか」
「それはどんな話ですか」
と王様もお妃様もお尋ねになりました。
オシャベリ姫は又お話を初めました。
「あたしは今までお話しした二つの夢がさめますと、ほんとに今夜は変な晩だと思いました。だって、寝ていれば黒ん坊が来そうだし、女中の室に行ったらばまた何だか変なことを見そうなので、困ってしまいました。それでしかたなしに寝床にねたまま二人の女中の名前を呼んでみました」
「ああ、それはよかった。初めからそうすればよかったのに」
と王様が云われました。
「でも前のは夢ですもの。しかたがありませんわ」
「ウン、そうだったな。それからどうした」
「そうしたら二人の女中が二人ともハイと云っておきて来ましたから、妾はやっと安心をして、今お話しした二つの夢のお話しをしてきかせました」
「二人とも吃驚したでしょうねえ」
と今度はお妃が云われました。
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