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幸福への意志(11/30)

(581字。目安の読了時間:2分)

 僕は引き合されて、ごく慇懃な挨拶を受けた。
一方僕の連れは、この家の心安い友だちの格で、みんなと握手したのである。
 僕の身の上について、しばらく問答があった後、みんなはパオロの画が――女の裸体画が出ている展覧会のうわさをはじめた。
「実によく出来ていますな。」と男爵がいった。
「わしはこの間、半時間もあの画の前に立っていましたよ。赤い絨毯の上の肉の色合いなんぞ、すばらしく見栄えがしますな。いやまったく、このホフマン君はねえ。」そういいながら、男爵はさもパトロンらしくパオロの肩を叩いた。
「だが、勉強しすぎちゃいかんぜ、君。後生だから過ぎんようにな。君はぜひともからだを大事にする必要があるよ。いったいからだの工合はどんなかね。」
 パオロは、僕が主人夫婦に自分の一身について、必要な説明を与えていた間、彼のすぐ向い合いに坐っている令嬢と、低い声で数語を交していた。
さっき僕が彼の様子に認めた、妙に緊張した静けさは、ちっとも失われていなかった。
どこがそうだったと、はっきりはいえないが、彼は今にも飛び掛かろうとしている豹のような印象を与えた。
黄ばんだ細面にある黒い眼は、きわめて病的な輝きを帯びていたので、彼が男爵の問に対して、世にもたのもしげな調子で、次のように答えた時には、僕は聞いていて、なんだか気味が悪くなったほどだった。

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