【ブンゴウメール】断食芸人 (30/31)
(414字。目安の読了時間:1分)
「それはな、おれが」と、断食芸人はいって、小さな頭を少しばかりもたげ、まるで接吻するように唇をとがらして、ひとことでももれてしまわないように監督のすぐ耳もとでささやいた。
「うまいと思う食べものを見つけることができなかったからだ。うまいと思うものを見つけていたら、きっと、世間の評判になんかならないで、きっとあんたやほかの人たちみたいに腹いっぱい食っていたことだろうよ」
これが最後の言葉だったが、まだ彼のかすんだ眼には、おれはもっと断食しつづけるぞ、というもう誇らしげではないにしろ固い確信の色が見えた。
「それじゃあ、片づけるんだ!」と、監督はいった。
断食芸人はわらといっしょに埋められた。
例の檻には一頭の若い豹(ひょう)が入れられた。
あんなに長いこと荒れ果てていた檻のなかにこの野獣が跳び廻っているのをながめることは、どんなに鈍感な人間にとってもはっきり感じられる気ばらしであった。
==============================================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! http://bit.ly/2R2326H
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49864_41927.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
==============================================
Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list:
*|UNSUB|*