ブンゴウメール公式ブログ

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2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (11/11)

(671字。目安の読了時間:2分) 不思議なことに、赤い蝋燭が、山のお宮に点った晩は、どんなに天気がよくても忽(たちま)ち大あらしになりました。 それから、赤い蝋燭は、不吉ということになりました。 蝋燭屋の年より夫婦は、神様の罰が当ったのだといっ…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (10/11)

(644字。目安の読了時間:2分) お婆さんは起きて来て、戸を細目にあけて外を覗きました。 すると、一人の色の白い女が戸口に立っていました。 女は蝋燭を買いに来たのです。 お婆さんは、少しでもお金が儲かるなら、決していやな顔付をしませんでした。 お…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (9/11)

(662字。目安の読了時間:2分) けれど、ただ青い青い海の上に月の光りが、はてしなく照らしているばかりでありました。 娘は、また、坐って、蝋燭に絵を描いていました。 するとこの時、表の方が騒がしかったのです。 いつかの香具師が、いよいよその夜娘…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (8/11)

(661字。目安の読了時間:2分) そして年より夫婦に向って、 「昔から人魚は、不吉なものとしてある。今のうちに手許から離さないと、きっと悪いことがある」と、誠しやかに申したのであります。 年より夫婦は、ついに香具師の言うことを信じてしまいました…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (7/11)

(718字。目安の読了時間:2分) そして、蝋燭を買って、山に登り、お宮に参詣して、蝋燭に火をつけて捧げ、その燃えて短くなるのを待って、またそれを戴いて帰りました。 だから、夜となく、昼となく、山の上のお宮には、蝋燭の火の絶えたことはありません…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (6/11)

(681字。目安の読了時間:2分) 誰でも、その絵を見ると、蝋燭がほしくなるように、その絵には、不思議な力と美しさとが籠っていたのであります。 「うまい筈だ、人間ではない人魚が描いたのだもの」と、お爺さんは感嘆して、お婆さんと話合いました。 「絵…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (5/11)

(666字。目安の読了時間:2分) しかし人間の子でなくても、なんというやさしい、可愛らしい顔の女の子でありましょう」と、お婆さんは言いました。 「いいとも何んでも構わない、神様のお授けなさった子供だから大事にして育てよう。きっと大きくなったら…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (4/11)

(673字。目安の読了時間:2分) 私の分もよくお礼を申して来ておくれ」と、お爺さんは答えました。 お婆さんは、とぼとぼと家を出かけました。 月のいい晩で、昼間のように外は明るかったのであります。 お宮へおまいりをして、お婆さんは山を降りて来ます…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (3/11)

(704字。目安の読了時間:2分) 遥か、彼方には、海岸の小高い山にある神社の燈火がちらちらと波間に見えていました。 ある夜、女の人魚は、子供を産み落すために冷たい暗い波の間を泳いで、陸の方に向って近づいて来ました。 二 海岸に小さな町がありまし…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (3/11)

(704字。目安の読了時間:2分) 遥か、彼方には、海岸の小高い山にある神社の燈火がちらちらと波間に見えていました。 ある夜、女の人魚は、子供を産み落すために冷たい暗い波の間を泳いで、陸の方に向って近づいて来ました。 二 海岸に小さな町がありまし…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (2/11)

(709字。目安の読了時間:2分) その人魚は女でありました。 そして妊娠でありました。 私達は、もう長い間、この淋しい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らして来たのだから、もはや、明るい、賑(にぎや)かな国は望まないけれど、これから産れる…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (1/11)

(664字。目安の読了時間:2分) 一 人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。 北の海にも棲んでいたのであります。 北方の海の色は、青うございました。 ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。 …

【ブンゴウメール】野ばら (10/10)

(259字。目安の読了時間:1分) かなたから、おおぜいの人のくるけはいがしました。 見ると、一列の軍隊でありました。 そして馬に乗ってそれを指揮するのは、かの青年でありました。 その軍隊はきわめて静粛で声ひとつたてません。 やがて老人の前を通ると…

【ブンゴウメール】野ばら (9/10)

(338字。目安の読了時間:1分) いま戦争は、ずっと遠くでしているので、たとえ耳を澄ましても、空をながめても、鉄砲の音も聞こえなければ、黒い煙の影すら見られなかったのであります。 老人はその日から、青年の身の上を案じていました。 日はこうしてた…

【ブンゴウメール】野ばら (8/10)

(308字。目安の読了時間:1分) これを聞くと、青年は、あきれた顔をして、 「なにをいわれますか。どうして私とあなたとが敵どうしでしょう。私の敵は、ほかになければなりません。戦争はずっと北の方で開かれています。私は、そこへいって戦います。」と…

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分) やがて冬が去って、また春となりました。 ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。 そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。 …

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分) やがて冬が去って、また春となりました。 ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。 そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。 …

【ブンゴウメール】野ばら (6/10)

(284字。目安の読了時間:1分) 白いばらの花からは、よい香りを送ってきました。 冬は、やはりその国にもあったのです。 寒くなると老人は、南の方を恋しがりました。 その方には、せがれや、孫が住んでいました。 「早く、暇をもらって帰りたいものだ。」…

【ブンゴウメール】野ばら (5/10)

(270字。目安の読了時間:1分) 二人とも正直で、しんせつでありました。 二人はいっしょうけんめいで、将棋盤の上で争っても、心は打ち解けていました。 「やあ、これは俺の負けかいな。こう逃げつづけでは苦しくてかなわない。ほんとうの戦争だったら、ど…

【ブンゴウメール】野ばら (4/10)

(300字。目安の読了時間:1分) 二人は、そこでこんな立ち話をしました。 たがいに、頭を上げて、あたりの景色をながめました。 毎日見ている景色でも、新しい感じを見る度に心に与えるものです。 青年は最初将棋の歩み方を知りませんでした。 けれど老人に…

【ブンゴウメール】野ばら (3/10)

(268字。目安の読了時間:1分) その快い羽音が、まだ二人の眠っているうちから、夢心地に耳に聞こえました。 「どれ、もう起きようか。あんなにみつばちがきている。」と、二人は申し合わせたように起きました。 そして外へ出ると、はたして、太陽は木のこ…

【ブンゴウメール】野ばら (2/10)

(310字。目安の読了時間:1分) そして、まれにしかその辺を旅する人影は見られなかったのです。 初め、たがいに顔を知り合わない間は、二人は敵か味方かというような感じがして、ろくろくものもいいませんでしたけれど、いつしか二人は仲よしになってしま…

【ブンゴウメール】野ばら (1/10)

(264字。目安の読了時間:1分) 大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣り合っていました。 当座、その二つの国の間には、なにごとも起こらず平和でありました。 ここは都から遠い、国境であります。 そこには両方の国から、ただ一人ずつの兵隊が派遣…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (10/10)

(418字。目安の読了時間:1分) そして、おばあさんは先に立って、戸口から出て裏の花園の方へとまわりました。 少女は黙って、おばあさんの後についてゆきました。 花園には、いろいろの花が、いまを盛りと咲いていました。 昼間は、そこに、ちょうや、み…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (9/10)

(437字。目安の読了時間:1分) と、おばあさんは、口のうちでいいましたが、目がかすんで、どこから血が出るのかよくわかりませんでした。 「さっきの眼鏡はどこへいった。」と、おばあさんは、たなの上を探しました。 眼鏡は、目ざまし時計のそばにあった…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (8/10)

(452字。目安の読了時間:1分) それでつい、戸をたたく気になったのであります。」と、髪の毛の長い、美しい少女はいいました。 おばあさんは、いい香水の匂いが、少女の体にしみているとみえて、こうして話している間に、ぷんぷんと鼻にくるのを感じまし…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (7/10)

(460字。目安の読了時間:1分) 小さな手でたたくと見えて、トン、トンというかわいらしい音がしていたのであります。 「こんなにおそくなってから……。」と、おばあさんは口のうちでいいながら戸を開けてみました。 するとそこには、十二、三の美しい女の子…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (6/10)

(424字。目安の読了時間:1分) おばあさんは、眼鏡をかけたり、はずしたりしました。 ちょうど子供のように珍しくて、いろいろにしてみたかったのと、もう一つは、ふだんかけつけないのに、急に眼鏡をかけて、ようすが変わったからでありました。 おばあさ…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (5/10)

(482字。目安の読了時間:1分) 窓の下の男が立っている足もとの地面には、白や、紅や、青や、いろいろの草花が、月の光を受けてくろずんで咲いて、香っていました。 おばあさんは、この眼鏡をかけてみました。 そして、あちらの目ざまし時計の数字や、暦の…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (4/10)

(409字。目安の読了時間:1分) いろいろな眼鏡をたくさん持っています。この町へは、はじめてですが、じつに気持ちのいいきれいな町です。今夜は月がいいから、こうして売って歩くのです。」と、その男はいいました。 おばあさんは、目がかすんでよく針の…